戦艦大和誕生(上)
読んだのはハードカバーですが、今は新書版もあるようです。
現代の金額にして総工事費1兆円というとんでもない兵器「A140」の誕生物語です。話の軸になるのは、大和の建設指揮を執った西島亮二技術大佐です。この人の斬新な生産方式は戦後のタンカー建設やトヨタの看板生産方式に受け継がれていきます。
設計技術者としては、これが大きかったことを誇るのではなく、これだけ小さくまとめられたことを誇りたいとのことです。よくこれだけのサイズにおさまったということです。それを可能にしたのが艦首の丸みだそうです。とはいえ前代未聞の巨艦であったことは言うまでもありません。
日本は当時20年くらい戦艦を建造していなかったのに、今まで以上に巨大な戦艦を予算内で納期内に作るという偉業を成し遂げた話です。
面白いのは単なる技術論に留まらず、設計などに当たった人たちの群像劇なっているところです。用兵側の要求を設計する側(艦政本部第四部)が受け入れすぎで、とんでもなく脆弱な艦艇を作ってしまったとか、大和には615万本以上のリベットが使われていますが、なぜに溶接ではなくリベットなのかとか、どうして効率の良いディーゼルエンジンじゃなくボイラーなんだとか、その裏には平賀という人の影響があったりという話があります(諸悪の根源ぽいです)。厚さ410ミリの甲鉄を巡らせ不沈艦と言われた大和には構造的な問題があったとか。
あと溶接技術から当時の日本の技術レベルと技術に対する考えた方がわかります(良い意味でも悪い意味でも)。
ただ工数とかわからないと話が見えてこないかもしれません。(これがいい説明かなhttp://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NGT/govtech/20050413/159129/index2.shtml)
熱い海戦はありませんが、この大和建設(までの)の話は熱いです。
熱い海戦なら、川又千秋が書いた
がいいかと。
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