ヒトラー 最後の12日間 それは死よりも惨い
ヒトラー 最後の12日間を見ました。原題はDer Untergang 『没落』です。
オフィシャルサイトはこちら:http://www.hitler-movie.jp/index2.html
プライベートライアンが勝利へと突き進む前線の将兵を描いたのに対して、これは負けゆく最高司令官を描いた映画です。
ポーランドそしてフランスを降伏させ、ソ連をあと一歩というところまで追い込み、自分は天才と確信した(これが冒頭の1942年の話)ヒトラーだったが、それから2年後の1945年4月にはドイツ帝国の首都ベルリンがソ連軍の手に落ちようとしていた。
あらゆる意味で勝利の可能性がなくなり、敗北という現実を突きつけられる。そのときヒトラーは・・・という映画です。
段々と孤立していくヒトラーの姿は哀れです。ゲーリングはさっさとベルリンから脱出し自ら次期総統を名乗り、最後には忠臣ヒムラーにも裏切られ、勝手に西側連合軍と停戦を結ぼうとしました。ヒトラーは拳を振りあげて激怒します。しかし拳は空を切るのみ。
ありもしない戦力を信じて挟撃を命じる。それに従う将軍たち。将軍たちが反論すると激怒する。まさに裸の王様。
シュペアーの設計した帝都の模型を眺める姿も、この期に及んでは現実逃避でしかありません。
ドイツは負けると自覚しながらも、最後まで勝利の夢を捨てきれず、兵士に降伏を許さず、徹底抗戦を命じる様は狂気と言えば狂気ですが、ある意味これが人間だとも思いました。
敗北が不可避であるという事実を目の当たりにし、将軍たちに騙された、お前らが無能だから負けたのだと怒り狂った後、自室に引きこもったヒトラーがフリードリヒ大帝の肖像画を見つめて何を思ったのでしょう。
フリードリヒ大帝は7年戦争において首都ベルリンをロシア軍に陥落されますが、ロシア軍が撤退したために最終的に勝利します。しかしヒトラーが当てにできる国はもうありません。世界が敵なのですから。
ヒトラーの権力が没落していく様子を「タバコ」が物語っています。ヒトラーは菜食主義者でタバコも吸いませんでした。(指導者として清くあることを望んでもいました。だからベルリンから逃げなかったのではないかと思います。)ですから、ヒトラーの前でタバコを吸う人間は一人もいなかったのですが、権力が失われていくにつれ、兵士たちがタバコをヒットラーの防空壕で吸い始めます。
ヒトラーの左手が震えていますが、あれはアルツハイマーだったらしいです。神経もやられていたと思います。背中も丸まっています。これは本当にそうです。
そして堕落。すべての終わりを前に防空壕でとめどなく酒をあおる将兵。しかし外ではソ連軍の砲撃が轟き、ベルリンを破壊していく。前線では将兵が倒れていく。無意味に敵の前に出て犬死する市民兵。水を求めて通りに出た子供や女性が榴弾砲で吹き飛ばされる。とおりに横たわる子供の死体にすがって泣き叫ぶ母親。
そうした中でSSが戦いを拒否する者たちを処刑していく。まさに地獄。
この映画が良いのはヒットラーだけではなくて他の様々な人間に焦点が当たっていることでしょう。だから余計に悲壮感があります。
3時間近くある映画ですが、時間をまったく感じさせません。
事実は冷たくむなしく、そして恐ろしい。
演出的に良かったと思うところ:
最初の映像が当時のカラー映像ぽいところ(妙に明るい)。それで普通の画質になります。
ドア越しに垣間見るという状況が多くあります。これもリアル感が出て良いです。
ブルーノ・ガンツは最高です。凄く似ているとは思いませんが、あの演技は秀逸です。
日本は東京落とされる前に降伏してよかったと本気で思えます。
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» 映画『ヒトラー最期の12日間』(Der Untergang)感想B面 [~Aufzeichnungen aus dem Reich~ 帝国見聞録]
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