羽生善治の 決断力 を読みました
直感の七割は正しいという帯のキャッチが気にって買ってしまいました。
どんな本でもそうですがアナリストの本と実践している人の本とでは話の重みに違いがあります。ただ実践している人の本も危険で、理想を書いている場合も多いと思います。この本はそういう意味で地に足のついた本になっていると思います。
自分と思考パターンが似ているので納得できたということもあると思います(似ているだけで将棋もさせませんし、なんのチャンピオンにもなっていません)。
経験には良い経験と悪い経験がある。
「経験を積んで選択肢が増えている分だけ、怖いとか、不安だとか、そういう気持ちも増してきている(32ページ)…そういうマイナス面に打ち勝てる理性、自分自身をコントロールする力を同時に成長させていかないと、経験を活かし切るのは難しくなってしまう。(33ページ)。
「決断のための情報が増えるほど正しい決断ができるようになるかといえば、必ずしもそうはいかない(56ページ)」そう思います。
変な話ですが、ことわざと同じです。「急がば回れ」と「鉄は熱いうちに打て」とは真逆です。しかしいろいろな物事の展開をみると両方正しいと思います。
将棋には「手を渡す」という方法があるそうです(マンシュタインの「後の先」みたいです)。「自分が思い描いていた構想とかプランをそのまま実現させることではなく、逆に相手に自由にやってもらい、その力も使って、返し技をかけに行くことだ。…この選択は気持ちに余裕(自信)がなければできない。(38ページ)」
またこういうことは実践してみないと理解の仕方が深まらないとも言っています「理解度が深まらないと、そこから新しい発想やアプローチも思い浮かばない。いろいろ試したり、実践してみたことこそが、次のステップにつながっていくのである(39ページ)」
未知のフィールドで戦うほうが面白いとも言っています。「未知の世界に踏み込み、自分で考え、新しいルートを探し求める気迫こそ、未来を切り開く力になる(39ページ)。」とうぜんそれにはリスクが伴うわけです。しかしリスクを背負わなければ決断はできない。剣豪同士の勝負の例えが良いので引用します。
お互いに離れていては勝負がつかないから、前へ進まなくてはいけない。前に進むとそれだけ危険が迫る。怖いから下がりたい気持ちになるだろうが、一歩下がっても、相手に一歩間合いを詰められるだけだ。状況は変わらない。逆に言えば下がれば下がるほど状況が悪くなるのだ。怖くても前へ進んでいく、そういう気持ち、姿勢が非常に大事だと思っている。
そのためにはプラス思考が重要なようです。といえば当たり前ですが、思い込みだけではどうにもなりません。ちゃんとテクニックもあるようです。持ち時間が少なくなっているときには「見切る」必要があるそうです。二者選択でどっちもダメなら、まったく読んでいない手の方が可能性がひろがるそうです。(111-112ページ)
「終盤に有効な手は、やわらかい手だ。それを探す作業にもなる。やわらかい手とは、幅の広い、意味のたくさんある手だ。また遅い手もいい手だ。急いでいくとその力を相手に使われて反撃されてしまう。」(112ページ)
将棋も同じ戦略でずっと勝てる訳ではないそうです。日々研究されてそれを破る手が出てくるという話しが出てきます。という話を前提して
私は「小さいころから始めたほうが伸びる」というのは疑問に思っている。何事も年齢が上がってから覚えた人は、感覚より知識に頼る傾向がある。だからといってダメというわけではない。将棋の世界では、将棋の質がとんどん変わっていっており、フォームを矯正しなくてはならない場面が必ず訪れる。小さい頃に身につけたフォームを新しく変えるのは大変だ。感覚より知識で覚えていたほうが忘れやすいので、次を受け入れやすいということもある。自分のスタイルを新しくすることもできるし、進歩や変化に適応しやすいといえるだろう(174ページ)
これが特に印象に残っています。
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