愛を読む人を観ました。★★★★☆
「愛を」は要らないような気がします。
ドイツ版「私は貝になりたい」って感じでした。
ネタバレありです。
恋愛映画といえばそうですが、ナチスがドイツに残した傷っていうのが大きなウェイトを占めていると思います。
タイタニックに出ていたケイト・ウィンスレットが主演ですが、あれよりずっと深い映画です。
以下、原作を読んでない、ほぼ妄想に近い解釈です。
序盤のハンナ(ケイト・ウィンスレット)がなんか愚鈍なオバサンぽいなと思ったら、文盲でした。
よく考えてみると、最初の少年マイケルとハンナとの情事は愛と呼べるのだろうかと。
ハンナは文盲なので(そのことは本人以外誰も知りません)、事務職ができず、SSに入隊して強制収容所の看守となります。そして終戦間際にユダヤ人の囚人の虐殺を行ったことで裁判に掛けられます。
そこで、生き残ったユダヤ人の女性がハンナはユダヤ人の子供たちを呼んで、本を読ませていたと証言しました。そこでその女性は、ハンナが良い人で自分たちを助けてくれると思っていたけど、実は本を読んでもらうためだけに呼んだのだといいます。
マイケルも同じような感じなのではないかと。最初に愛してくれた人だと思ってたのに裏切られたというか、主人と奴隷の関係だったのかと気づかされたというかなんというか。
「私は貝になりたい」は命令でアメリカ兵を殺した(実際には殺していない)主人公が死刑になってしまう話ですが、こっちは火事になった教会に囚人を閉じ込めたまま焼き殺した罪に問われます。なぜかと問われたハンナの答えは、鍵を開けたら囚人があたりに逃げ出して秩序が乱れるからというものでした。
当時の法的には正しいことをしているという認識に立ってます。そりゃそうだろうと。
とはいえ、戦後ドイツの観点からすれば、それは大罪なわけです。結局、ハンナは(文盲であることを隠して仲間の罪をかぶり)終身刑を言い渡されます。なんでマイケルがハンナにとって有利な証言をしなかったのか、明確には示されません。ハンナの名誉のためなのか、恋に破れた復讐なのか、戦犯だから当然なのか、あるいはそのすべてか。
おかげでマイケルも秘密(闇)を抱えて生きていくことに。
ここまでが前半。
後半は、判決から10年後、離婚したマイケルがふとハンナに読んだオデッセイアを読んで昔が蘇り、それをテープに吹き込んで刑務所で服役するハンナに郵送します。ハンナは貪るようにそれを聞きます。それからテープを聞きながら本を読んで文字を覚え、マイケルにたどたどしいなら手紙を書くようになります。
ハンナとマイケルの立場が逆転してます。
そしてさらに月日が流れ、1988年、ハンナが出所することになります。身寄りのないハンナの唯一の知り合いとしてマイケルが彼女の出所後の仕事と住居を世話するように刑務所の係官から言われます。一度もハンナに面会に行かなかったマイケルが、そのことを伝えるためにハンナに会いに行きます。そこでハンナはマイケルに結婚してるのと尋ね、していた(離婚した)とマイケルは答え、出所後の仕事と住居の話を始めます。
ハンナがマイケルの手に触れようとすると、マイケルは咄嗟に腕を引っ込めます。
(おそらく)出所日に、ハンナは机の上に本を置き、その上に乗って首吊り自殺します。
遺書には紅茶の缶にはカネが入っており、これを教会の火事で生き残ったユダヤ人女性に渡してと書いてありました。
そのカネをマイケルが、ユダヤ人女性に渡しに行きますが、受け取りを拒否されます。
ハンナは結局、社会のどこにも居場所がない人になっていた、というオチなんだと思います。
余談:マイケルの娘がディア・ドクターの監督の西川美和に似てました。
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