国税査察官~チェイス~第6話 最終回
まさか村雲の母親が自作自演の誘拐を指示してたとは。
それを村雲も知ってしまった。結局一番可哀想なのは村雲修一で、その一番の理解者が、妻を殺された春馬だった。
やられました。
地下金庫で、死んだはずの母親が映るニュース映像を見ている村雲。それが村雲の深層心理。
春馬が多摩税務署に左遷されてから1年後、村雲から春馬に電話がかかってくる。会ってどうする?殺す気かと問う村雲。これに春馬はとりあえず、一発その面ぶん殴ってやろうかと応じる。苦笑する村雲。
査察官の言葉とは思えないな。
俺はもう査察じゃない。この1年毎日毎日お前のことばかり考えてた。
俺を殺したいのか?
ああ。俺がやらなくても、お前の弟がやるかもしれないな。
何も答えない村雲。
何でも知ってんだよと春馬。そしてその言葉は最後に現実となる。
上手に立ったつもりかと、村雲が春馬を挑発する。
お前は復讐を終えたつもりだろうが違うぞ。一度始まった復讐は続くんだ。今度は形を変えて・・・・・・
黙れ!と声を荒げる村雲。
知りたいだろう? 死んだと思っていた母親が生きていた理由を。母親がお前に会おうとしない理由を。
その必要はない。村雲は知っていた。村雲は携帯を切った。
香織は復讐する相手を間違っている、檜山一家ではなく母親だと言うと村雲に殴られた。
香織は檜山基一の遺産相続で隠した5000億円(最終的に村雲のものとなるはずだった)を檜山基一の口座に送金した。
査察が動いた。春馬は国税査察部に招聘され、基一の家宅捜索に入った。そこに香織がやってきた。
村雲を助けてくださいと香織は春馬に言った。そして村雲のことを語りだした。
村雲修二と初めて会ったのは十一年前。当時の彼は既に敏腕ディーラーで同僚からも一目置かれていた。だが香織の印象は少し違った。
彼はとてもいい子に見えたんです。クラスには1人はいたと思います。先生の期待に応える優等生で、お行儀がよく、でも面白みのない子。遊び慣れたところがなくて、退屈な人だとも思いました。ただ彼はとてもきれいにご飯を食べる人だったんです。「きっとご両親の躾がよかったのね」って言ったら、彼は少し照れたように笑いました。まるで、お母さんに頭をなでられた子供のように。
そして香織は力説した。村雲は普通の男性で、復讐なんて感覚は一度も持ったことがないようだったと。
どういう意味かと春馬が尋ねる。村雲の核心がここにある。
香織が答える。
ある日、村雲が香織の部屋に遊びに来ていたとき、テレビを見ていた彼は突然震えだした。寒いのかと香織が尋ねると、村雲は答えた
今、幽霊を見た。
それから1ヶ月後に村雲は忽然と姿を消した。
香織は春馬に告げた。村雲は怒りや憎しみで、あんな事をしてたんじゃない。ただ褒められたかったんだと。
香織は春馬に村雲の住所を渡した。彼を助けてくださいと。
助ける気はないと春馬。そして村雲が潜伏するヴァージン諸島に向かった。
村雲の邸宅に侵入した春馬の後ろで撃鉄のあがる音がする。そして彼の後頭部に拳銃の銃口が押し当てられる。
お前を誘拐させたのは母親自身か?と春馬。
ええ、と村雲。傲慢な返事ではなく、優等生のそれであった。
檜山正道から金を奪い取るための自作自演か?
ええ。
お前の腕を切り落とさせたのもそうなんだな?
何もかも承知の上で村雲は檜山家を陥れた。何がお前をそうさせた?
母親に褒められたかったのか?
やにわに春馬が村雲の方へ向き直り、村雲を壁に押し付け、柱に叩きつける。村雲が反撃に転じ、春馬は気を失う。
目を覚ました春馬は縛り上げられていた。あたりに石油を撒く村雲。そしてライターに火を点した。
そんなことしてなんになるんだよ?と春馬。
何にもなりませんよ。何にも。
お前が絶望しているのは母親だ。
違いますよ春馬さん。僕は絶望なんかしていない。生きるために子供の手足を切り落とす母親なんて、切り落とされた子供なんて世界中に大勢いる。僕は絶望なんてしていないし、誰も恨んでいない。ただ…ただ…
もうひとつの人生を想像してしまうんですよ。あっちとこっちにどんな違いがあるんだ?抱きしめられる子供と、腕を切り落とされる子供にどんな違いがあるんだ?いくら想像しても、違いが・・・わからないんだよ!
だから希望を持ってしまう。ありえたかもしれない人生に・・・希望を持ってしまう。ねえ…ねえ、春馬さん、そう思いませんか?
人を狂わすのは、いつもそういう希望なんだ。まぶしくて、まぶしくて…目を細めて見つめる…希望のともし火なんだ。
村雲は地下金庫に火を放ち、自殺に見せかけて車で逃亡するが、どこからか飛んできた母親のと同じタオルにフロントガラスを塞がれ、道路からそれて車は転倒する。
春馬は転倒した車から村雲を助け出し、日本へと帰国する。春馬はすぐに村雲の取調べを行わず、村雲の母のもとへ行くことにする。母親がいる地方の空港についた春馬はレンタカーを借りた。そこで村雲はこう切り出した。
俺から残りを金の隠し場所を聞き出せたら、あんた出世できるのか?
どうだろうな。隠し場所はいずれ尋問を受けるだろうが、もはやうちだけの案件じゃないしと春馬が答えた。
春馬がレンタカーの手続きをしている間に、空港のトイレで村雲は腹を刺された。刺したのは檜山基一だった。村雲はそんな顔するな、お前は当然の権利を行使したまでだと村雲が言う。そして
ごめんな、基一
と言い残してトイレを出て行った。
何も知らない春馬は村雲を車に乗せて母親のもとへ向かう。そして村雲は春馬に会ってきてくれという。お前が行かなくてどうすると春馬は叱る。
会わせる顔がないんだと村雲。
それはお前じゃなくて母親の方だろう。
怖いんだ。会うのが怖いんだ。
そして木彫りのバラを春馬にこれを渡してくれと差し出した。要らないって言われたら春馬にやるよと。
小雨が降る中、春馬は木のバラを握りしめてひとり村雲の母親の文子もとへ向かった。
史子は庭でバラの手入れをしていた。
彼はすぐそこまで来ていると春馬が母親に言う。もしよければ母親の方から村雲に会いに来てくれないかと。木彫りのバラをしばし見つめていた文子が顔を上げる。
人違いでしょう。
と笑う文子。
これはお返しします。
文子は春馬に木のバラを戻した。
事情があるのはわかっている。自分は過去を詮索しに来たのではないと春馬。だた息子の村雲の気持ちを伝えに来たのだと告げた。
文子は春馬から顔をそむける。
私に息子はおりません。
唇をかみ締める春馬。
そんなこと言ったらあいつはいつ救われるんですか?何をすれば救われるんですか?
何も答えぬ文子の横顔を春馬は睨む。
家から母親を呼ぶ娘の声がする。
文子は去っていった。
春馬が車に戻ると、村雲はいなかった。あたりを見回すと、村雲がベンチに座っていた。
春馬がつくり笑顔で村雲のもとに向かう。母親は木彫りのバラを受け取って涙を流して喜んだ。できることならお前に会いたいって言い、村雲の前に立つと、村雲の腹は赤く染まっていた。村雲はひとり雨に濡れて死んでいた。春馬は立ち尽くした。村雲が救われることはなかった。
春馬が木彫りのバラをポケットから取り出した。そして底を開けると、そこにはスイスの銀行の口座番号と暗証番号が書かれた紙が入っていた。名義は澤村文子。村雲の母親であった。
届かぬ思い。切ない話です。
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