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2010/12/17

SPEC 癸の回 百年の孤独

地居聖、お前も津田助広か!

なんだかウルトラセブンの最終回を観ている気分になりました。

久々に盛り上がった最終回でした。

地居が公安零課の津田助広であり、記憶を改ざんする茶色いコートの男であったということですか!地居が自分の当麻との恋を成就させる中で、ニノマエを使って志村に致命傷を負わせてト影のある恋敵、瀬文を用意したとは、どんだけ最初にかぶせたんだって話です。

当麻曰く映画化ないそうです。以下、あらすじ。

雪を浴びたニノマエの顔が赤くただれて苦しがり、拳銃を持って立つ当麻の前に倒れる。
「当麻?当麻?」
雪が降る倉庫街。瀬文の眼の色が変わり、倒れこんで四つ這いになり、見えなくなった当麻の姿を捜す。
「目やられたか」と当麻が言う。
「瀬文さん、雪を避けてください」
当麻が左手で顔を覆うと、ニノマエへと歩み寄る。
「どうして」顔と手がただれたニノマエが呻く。
当麻がニノマエを拳銃で狙いながら答える。
「雪の中に毒を仕込んでおいた。アンタのSPECはあたしたちの数万倍のスピードでこの世界を動き回る能力ってこと。だからあんたに付着した毒は私たちより数万倍のスピードでアンタの肉体を蝕んでいくはず」
ニノマエが血で染まった目で当麻を悔しそうに睨む。
「私たちもダメージを負うけど、私たちがこの毒でやられる前に必ずアンタのほうがやられる。乱暴な賭けだったけど、私たちの勝ちだ!」
「チクショー!」ニノマエが吠えた。

倉庫の高いベランダに白い防毒服を来た3人が毒を散布機を操作している。
「猪俣もう終わったか?」
馬場管理官が訊く。
「曇って見えませ~ん」
猪俣がマスクの目の部分を手袋をはめた手で擦るが、内側が曇っているので視界は晴れない。
「マスクを取って様子を見てみろ!」
猪俣がマスクを取って下を覗く。
「あれ?沁みる」
倒れたニノマエに当麻が拳銃を向け、瀬文は四つん這いになっていた。
「毒を止めろ!」当麻が上の3人に叫ぶ。
「毒を止めろ言うよちます!」猪俣が馬場管理官に伝える。
「ストップ!ストップ!」
馬場管理官と鹿浜が慌てて散布機を止める。
雪がやんた(雪じゃなくて、雪みたいな毒だったのですね)。
毒が晴れてニノマエがしっかりと見えるようになった当麻が戦慄を覚える。ニノマエの右耳の後ろに痣を見つけたのだ。
「まさか……まさか、陽太!そんなことが!」
「そんなことがあるんだよなぁ、驚くことに!」
男の声がした方を当麻と瀬文が見る。
茶色いフード付きのコートを来た男が座っている。
地居聖だ。
「雪はやんだが雨は降る。ニノマエはキミの弟だよ」
当麻は当惑している。
「驚いた?この僕がコイツの記憶を奪ったからさ。7年前にね」
地居は立ちがってニノマエのところに来ると、ニノマエの両腕を掴んで倉庫の壁まで引きずっていくと、壁にニノマエをボロ雑巾のように打ち付けた。ニノマエが呻いて倒れる。
「嘘だ!」と当麻。「だって年齢が!」
「そう、僕たちの1秒間で彼は何日も過ごしていたりする。その分成長してるんだよ。まだこれで13歳だけどね。7年前の飛行機事故で奇跡的に、というかその時に時を止める能力が芽生えて生き残ったんだよ」
「なんで知ってんの?」
当麻が地居を怪訝な目つきで見る。地居が笑う。
「飛行機とともに炎上する大好きなパパとママを見て、心の底から時を止めたかったんだろね。感動的な話だ」
地居が倒れたニノマエに蹴りを入れると、当麻に向かって微笑み、
「時を止めるなんて人類最高のSPECだと思わない?」
当麻の顔を覗き込んだ。
「でも本当の意味でそれをコントロールしてたのは僕なんだよ」
「コントロール?」
当麻が顔をしかめる。
「ニノマエがキミを憎んでいる理由を知ってる?」
当麻はビルの屋上でニノマエに言われたことを思い出した。
<キミが僕の家族を皆殺したんじゃないか。爆弾魔のくせに説教なんて>
当麻は背筋に戦慄を覚えた。地居がほくそ笑む。
「そう、僕が書き換えた偽の記憶だよ」
ニノマエが当麻を敵視し、腕を奪ったのも、地居が作り出した虚構の憎悪に駆られてのことだたのだ。
「何もかもアンタが仕組んだの?」
当麻が訊く。
「そう。そして僕の想像どおり、キミはあんな凄い能力に勝った。最高の頭脳だよ、まったく!」
地居が狂喜しながら、暗く沈む当麻の周りを飛び跳ねる。
「テメエ……」
そう毒づく瀬文は拳銃を構えてるが、眼をやられていて地居が見えない。地居が得意げに瀬文の前に立って顔を覗き込み、
「瀬文……見えてねえんだろ?この凡人が」
拳銃を握って強引に自分に向けさせ、
「撃ってみろよ!」
と瀬文の腹に強烈な膝蹴りを食らわせ、拳銃を奪って道路に突き飛ばした。倒れたニノマエのもとに当麻がしゃがみ込むと、ニノマエに顔を重ね、その手を握り締め、嗚咽まじりに呼びかけた。
「陽太……陽太……」
「ネエちゃん……ネエちゃん」
意識を失っているニノマエが弱々しい声で答えるが、握っていた手から力が抜ける。
「陽太!」
当麻が泣きながら叫ぶが、ニノマエはもう何も答えない。
「辛いだろうね」
地居は腰を折って、泣いている当麻を覗き込む。だがその言葉に感情はこもっていない。
「そんな顔しないで。怒りと悲しみは人を不幸にするだけだよ」
「あんたのせいで!」と当麻が地居に殴りかかるが、地居に腕を掴まれて壁に打ちつけられる。
「大丈夫!」と地居が両拳を当麻のこめかみに押し当てる。
「消え~る、消え~る、消え~る」
地居がそう唱えると、当麻の頭からニノマエに関する記憶が消えていった。当麻は気を失って倒れた。
「いい娘だ!」地居が叫ぶ。
「テメエェェェ!!当麻に何をした!」
反対側の壁にへたれ込んでいる瀬文も怒鳴った。
地居が瀬文に駆け寄ってくる。
「俺の紗綾を軽々しく呼ぶなァァ!!」
地居が瀬文の頭に蹴りを入れ、瀬文が道路に倒れると、その上に馬乗りになった。
「お前の記憶を書き換える!」
当麻の時と同じように地居は両拳を瀬文のこめかみに押し当て、呪文を唱えた。
「消え~る、消え~る、消え~る」
当麻との記憶を消そうというのだ。
「そんな訳にいくか!」瀬文が歯を食いしばって抗う。「デカ魂ナメんな!」
だが瀬文は気を失った。地居が立ちがり、狂気じみた笑い声をあげて飛び回り、当麻のキャリーバッグを蹴り飛ばし、ガッツポーズをして高らかに笑うと、ふと真顔に戻った。
「馬鹿が」
「当麻君~」
防毒服を来たままの3人がやって来た。すると地居は、白々しく紗綾と心配そうな声を出して当麻に駆け寄る。
「なぜそこに居る!?」
鹿浜が地居に怒鳴る。
「紗綾に呼ばれて」
地居が介抱しているフリをしながら答える。
当麻、瀬文、ニノマエは救急車で病院に搬送された。

頭と手に包帯を巻かれ、酸素マスクをした当麻が病院のベッドで目覚める。
「気がついた」と地居の声がした。
当麻の傍らに座る祖母が紗綾と呼びかける。
祖母の後ろには地居、そして馬場管理官、鹿浜、顔に包帯を巻いた猪俣の3人がいた。
「当麻君、良かった」
管理官が安堵の笑みを浮かべる。
当麻が酸素マスクを外してため息をつき、辺りを見回す。そんな当麻の様子を地居がじっと見ている。
「今、陽太が……」と当麻が呟く。
「陽太がどうしたの?」
祖母が聞き返す。
「夢見てた」と当麻は答えると、地居がニヤリとした。
「もう3日も意識がなかったのよ」と祖母が言う。

地居が紅茶を淹れる。
「もう大丈夫ですよ。ただ体は思うように動かないでしょうから、しばらくは安静に」
メロンが大好きな警察病院の太った医師が当麻に伝える。当麻はじっと天井を見つめている。馬場管理官と鹿浜が医者に頭を下げる。
「先生、わしは?」と顔に包帯を巻いた猪俣が訊くが無視される。
「先生、ちょっと」
祖母が菓子折りの入った紙袋を持って、病室を出て行った医者を追いかける。
「瀬文さんは?」
当麻が口を開いた。
「キミより多く毒を浴びたみたいでね。特に顔がね」と馬場管理官が答える。「キミは髪の毛で護られていたが……彼は一時的に失明しているけども、じき回復するだろうとのことだ」
「野々村係長は?」
「たぶんもうすぐ……」と鹿浜が言いかけたところで、
「老兵は死なず。それが私のSPECだ」
体中に包帯を巻いて松生をついた野々村係長が当麻の病室に入ってきて、
「大丈夫ブイ」
と馬場管理官ら3人に敬礼する。3人も応礼する。
「係長…」と当麻が野々村係長を見る。「私たちほんとにあのニノマエを倒したんですか?」
「そうだとも。毒をチュ~っとね」
野々村係長が注射器を刺す手振りをする。
「ニノマエは死んだんですか?」
地居も茶をカップに注ぎながら、聞き耳を立てる。
「まだ生死の境をさまよっているが、まず助からんだろう」
「どうぞ」
地居がお盆にのせた茶を野々村係長に差し出す。
「大学の近くのオーガニックハーブ紅茶屋の自家製オーガニックハーブ緑茶です」
「緑茶、紅茶どっち?」
野々村係長が戸惑う。馬場管理官たち3人も緑茶を頂く。
「なにしろニノマエとは長い戦いだったからねえ。まだ現実感がないんだろう。僕にも覚えがある。長い間追っていた事件を解決したときの虚脱感っていうか!」
野々村係長が笑う。そうそうって3人も笑いながら相槌を打つ。
そんな和んだ空気の中で、当麻はモヤモヤした何かを頭の中で探そうとするが見つからず、頭痛がして右手で頭を押さえる。
「あとは彼氏君、宜しく」と野々村係長は言うとテンションがさらに上り、
「地居君もさぁ、危険を顧みず心配して駆けつけてくれるなんてイイ話じゃないか!」
3人とともに笑い合う。地居もうざったそうに笑う。
「バイナラ」と野々村係長が当麻の病室を出て行くと、
「斉藤清六、ちい散歩」と突っ込みながら3人も出て行った。
「そういえば、なんであんた現場にいたの?」
腑に落ちない当麻が地居に尋ねた。
「君が怖いっていうから、心配になって後をつけたっていうか」
地居が答える。
「私があんたに捜査の前に怖いって言ったの?」
「そうだよ。覚えてない?」
当麻は覚えていなかった。
「寝てなさい」と地居は当麻に掛け布団をかけた。

大きなフルーツバスケットを両手で持った美鈴が足で病室のドアを開けて入ってくる。中には顔中に包帯を巻かれた瀬文がベッドにいびきを立てて寝ていた。寝ている瀬文に美鈴が言う。
「瀬文さん、早く良くなってください。それまで今度は私が毎日来ますから」
包帯の隙間から覗く瀬文の額には汗が滲んていた。それに気づいた美鈴がハンカチをとりだして拭おうとすると、瀬文のビジョンが流れこんできた。それはニノマエが当麻の弟の良太で、地居が記憶を改ざんするSPECを使ったことを伝えるものだった。(瀬文が汗ばんでいるのは、地居の記憶改ざんSPECとデカ魂をかけて戦ってるから?)。

「どういうこと?」
美鈴が当麻の病室に駆け込んでいた。
当麻は美鈴の顔を見ても、誰かすぐに思い出せなせなかったが、少し考えて美鈴だと思い出した。
「ニノマエは当麻さんの弟だったの?」
美鈴が尋ねると、
「何言ってるの?私の弟は七年前に死んでる」
と当麻は答えた。納得がいかない美鈴は部屋を見渡し、赤いキャリーバッグを見つけて、ハンドルを握った。当麻がニノマエの手を握っているビジョンやニノマエの右耳の裏に良太と同じ痣を見つけたビジョンが美鈴に流れこんでくる。美鈴が当麻に向き直って言った。
「耳の後ろにヒトデ形の痣があった。それと同じ痣がニノマエにもあった」
それを聞いた当麻はまたひどい頭痛がして、水が飲みたいと呟く。
「今持ってくる」
美鈴が急いで水を汲みに出て行く。
しかし湯沸室から水を持ってできたのは地居だった。
湯沸室には美鈴が倒れていた。

地居が水の入ったカップを持って当麻の病室に入る。
「あれ?美鈴ちゃんは?」と当麻が訊く。
「何か用事思い出したって慌てて帰っていったよ」
地居が笑顔でカップを当麻に差し出す。
「あそう。何だったんだろう……」
当麻が天井を見てため息をついた。

瀬文の病室。
「理由は分かりませんが、深い眠りについています」
太った医者が野々村係長にいびきをかいて寝続ける瀬文の様態を説明する。
「目も含めて回復にはしばらくかかるかも」
「そうですか……」
野々村係長は険しい顔で瀬文を見た。

当麻の病室。地居が洗面台でりんごを剥きながら当麻に訊く。
「そういえばさ、俺たちなんでこうなったんだっけ?」
「なんでって?」ベッドの当麻が聞き返す。
「そのニノマエってヤツさえいなければ、今頃俺たちとっくに結婚してたんじゃなかった?」
「そんな話、あったっけ?」
「何忘れてんだよ」
地居がキレて洗面台に剥きかけのりんごとナイフを放り投げると、当麻のもとに歩いて行って、
「ひどいなあ」
と右拳を当麻のこめかみに当てる。当麻の目がかっと見開き、記憶が操作された。
「そっちが新人刑事だった頃、ソフトクリームをダラダラこぼしながら俺に逆プロポーズしたんだよ」と地居が言う。当麻は気を失っていて何も答えない。
「ねえ聞いてる?」
地居がまた拳を当麻のこめかみに当てる。当麻が目覚めた。
「そう言えば、イテテテ」
当麻が地居の拳を受けた側の頭を押さえる。
「大丈夫?」と地居が心配する。
「うん……」
「とにかく仕事が一段落して良かった」
「うん……」
「だからさ、ホントに結婚しようか?」
地居が当麻に訊いた。
「マジ?」と当麻が眉をしかめて地居を見る。
「マジ」と地居が頷く。「てゆうか、俺が傍にいないと、あんたまた何しれかすか分かんないし、心配で仕方ないよ」
「……なんか頭がぼーっとしてて、考えておくってことで今日はいいかな?」
当麻はプロポーズを受けなかった。
「うん。じゃあ、ゆっくり考えてみて」
「うん」
地居が当麻の枕元にあったメモ用紙を取り上げる。そこにはたくさんの数式が書かれていた。
「何これ?」と地居が訊くと、当麻がそれを地居から取って見てみた。
「あ~。はやぶさの機内時間の計算」と当麻が答える。「この前地球に帰ってきたとき、一体はやぶさの中は何日の何時だったんだろうって」
「ふ~ん。相対性理論か。でもなんで、はやぶさ?」
地居が計算の書かれたメモをベッドに並べていく。
「昔、ウチの父がはやぶさの開発に携わってて」
「え?あのはやぶさ?」
「うん」当麻が懐かしそうに微笑む。

2003年9月。当麻の父の書斎。
「これが、はやぶさ?」
人工衛星の模型を持った陽太が父に尋ねる。そこには祖母と中学生(?)の当麻もいた。
「ああ」と父が答える。「今は太陽の周りの回っている。予定通りいけば、4年後の夏にはイトカワの石を拾って戻ってくるぞ」
「僕も乗りたい!」
陽太がはやぶさの模型をしげしげと見る。
「人間を乗せてイトカワへ行く宇宙船を造るにはあと何十年もかかるだろうな」
「あたしが造る」と当麻が言う。「そんで双子のパラドックスの実験をしたい」
「う~ん、何歳で帰ってくるかなぁ。計算してみよう」と父がメガネをかけ、メモ用紙を取る。当麻がやったと喜んで目を丸くする。そこに母がケーキと飲み物をもって来る。
「はやぶさの軌道は……理論上」
父が数式を書き始める。それを見た当麻が興奮する。
「数式高まる」
「数式高まる」
陽太が当麻のマネをする。それを聞いた母が笑う。
「ねえ楽しい?」と祖母が当惑する。
「数式高まる」と当麻がまた言うと、
「数式高まる」と陽太がまたマネをする。

「スウィングバイ中の加速度を……」
ベッドに状態を起こしている当麻が呟く。
「なるほど、いい子だ」と地居がメモを見て感嘆の息を漏らす。
「分かってる?ほんとに分かってる?」
当麻が地居の言動を疑う。
「分かってるよ。てか凄いわ、紗綾」と地居が笑う。
「なれなれ慣れしい」
ギブスをはめた左手で地居の後頭部をチョップする。
「楽しいっすか?」
病室のドアのところに立つ看護婦が変なものを見る目で訊いてきた。

包帯で体中を覆われたニノマエは意思不明のまま、牢獄の中で集中治療を受けていた。
「これがニノマエか?」
馬場管理官が鉄格子越しにニノマエを見ている。
「まだ子供じゃねえか」と鹿浜が言う。
「子供じゃろうが何じゃろうが、重罪人は許せんわ」
猪俣は包帯で覆われた頬をさすりながらニノマエを睨む。
「治療なんかやめて早く殺しましょうよ」
「馬鹿野郎」と鹿浜が叱る。「デカに私情は禁物だ」
「何を綺麗事を言うとるんじゃ!ジジィ!」
やめろ二人ともと馬場が制するが二人は口論をやめない。たまらず馬場がやめろと怒鳴る。猪俣と鹿浜は口論をやめた。馬場が叱咤する。
「当麻と瀬文が命がけで追っていたものを考えろ!」
「何を言うとるんですか?」と猪俣が訝り、
「事件は解決したんじゃ?」と鹿浜が馬場を見る。
「何か怪しい」と馬場が答える。「デカの勘とか信じていなかったが、何か騒ぐ」

地居が和服の老人と将棋を指している。老人は正座で座り、地居は鷹揚に胡座をかいている。放たれた襖の奥に、橙色の和服を着た2人の少女が並んで正座している。
「僕、将棋好きなんですよ」と地居が老人に言う。
「若いのに将棋好きとは、見所がある」と老人が答える。
地居が角を斜め右に進める。
「昔はチェスも好きだったんですけど、チェスの駒は取ったら消えるだけでしょ。でも将棋の駒は取った瞬間から味方になるそこがいい」
「キミの能力みたいだな」
老人が地居から取っていた香車を置いた。地居が言ったことをして見せているような手だった。
「さすが歴史を動かしてきた秘密結社のトップは、人に取り入るのが上手ですね」
地居が王将を左隅に移した。
「イングランドのグレートロッジからも直にお目にかかりたいと、やいのやいのウルサイ」
老人は将棋盤の下から封筒を地居へ渡した。
「そっちが来るんだったら、会ってやってもいい」
地居が答える。
「伝えておこう」と老人は飛車をはると、
「ニノマエ亡き今、何を企んでいる?」
と将棋盤を眺めながら尋ねた。
「僕はシナリオライターになりたいですね」
地居が王将を動かす。
「シナリオライター……」
老人が笑い、手持ちの桂馬をはる。
「僕のシナリオどおり、世界を動かしていきたい。たとえば戦争なんかも、そろそろ起こしてみたいですよね。歴史上一番派手な時代として盛り上げてみたい」
地居が不敵な笑みを浮かべる。
「そんなこと出来るわけがない」
老人は一蹴し、金将をおく。
「簡単ですよ」
地居が馬鹿にしたように笑う。
「何十人かの記憶を書き換えていけば、憎しみが生まれてテロが始まる。911(セプテンバーイレブン)然りですよ」
地居が王将を動かした。
「もうひとつ聞いてもいいかね?」
「どうぞ」
「なぜ当麻にこだわるのかね?そもそもは、ニノマエを倒すために始めた、ただのゲームじゃないのかね?」
「兄弟対決なら面白いかなと思って、そういうシナリオにしたんです。実際見ごたえあったし」
老人は黙って地居を見ている。
「そのうちですよ、だんだん当麻の頭脳にマジに感動して、好きになっていったんです。今では本当に愛している。当麻の心を、すべてを手に入れたい。それが手に入らないなら……この世にない方が良い」
「瀬文を巻き込んだのは?」
地居がほくそ笑む。
「やっぱラブストーリーには恋敵が必要でしょう。サブコード絡みで人生をめちゃくちゃにされたヤツが未詳にやってくる。彼はある事件で心に傷を負っている……」
志村が瀬文めがけて放った自分の銃弾に倒れたことを思い出して地居がクククといやらしい笑い声を立てる。
「いいファーストシーンでしたよ」
ピシャリ。地居の笑いを遮るように老人が将棋盤に駒を置いた。
「お前さん、モテないだろう」
地居が真顔になり、老人を睨む。
「どういう意味だよ」
「なぜなら、世界一ウザイ」
老人が渋い顔をする。
「ウザッ!」
2人の少女もウザイと声を上げる。
「つんだよ……」
老人がしたり顔で地居を見返す。
「津田くん」
歩が「と」に変わっていた。
「歩も目覚めると金となる。将棋は奥が深いねえ」
地居が激昂する。将棋盤から駒を乱暴に払って立ち上がると、老人を下に見て叫んだ。そこに津田助広のイメージが重なる。(ブブセラサラリーマンも出てくる)
「SPECもない劣等動物が俺にタメ口を叩くな!」
リボルバーを抜いて3発、立て続けに老人に撃った。

立てるようになった当麻がうぃーっすと瀬文の病室に入ってくる。
瀬文はまだ酸素マスクやら心電図やらつけられてベッドに横たわっていた。
「まだ寝てるんすか?長いっすね」
当麻が瀬文の枕元に寄ってくる。そしてふと窓際に目を遣ると、そこに美鈴が置いていったフルーツバスケットがあった。当麻の貪欲スイッチが入る。
「夢のフルーツバスケット!」
当麻は可愛い子供を見つけたかのようにフルーツバスケットに駆け寄り、上にかぶせてあるビニールをちらっと開けて中の臭いを嗅ぐ。
「キウイOK。メロンOK。梨にOK。バナナギリギリ。うふっ!」
そして瀬文の横に椅子を置いて座ると、フルーツと調味料類を持ってきて、これみよがしに食べだす。
「ふりかけバイン馬鹿ウマッ!」
と大声を上げ、マヨネーズのかけた半切りメロンをスプーンですくって口に入れる。
「マヨメロ、メロメロ、馬鹿ウマッ!聞いてます?」
瀬文の右手が動いて、当麻にツッコもうとするが、当麻に掠りもしない。
「俺の物勝手に食うな。味馬鹿、舌馬鹿」
瀬文が目覚め、もう一度右手を振り上げて、当麻に突っ込もうとするが当たらない。
「いいすね」当麻が瀬文に振り返る。「懐かしい気がしますなぁ。頭ここです」
瀬文がツッコミやすいように当麻がベッドの方に状態を傾ける。
「食わん、殴らん……」
そう瀬文は言い突っ込もうと手を上げたが、当麻を叩く前にまた眠ってしまった。
「寝るな馬鹿!起きろ瀬文!目開けてこっち向け!」
当麻が瀬文の胸を揺するが、瀬文は起きない。
結局、当麻は椅子に座ったまま、頭を瀬文のベッドに乗せて寝てしまった。
その光景を地居が病室のドアから指を咥えて恨めしそうに見ている。
「起きろ!」
地居が病室に入ってくると苛立った声で当麻に呼びかける。
「寝てた……」
当麻が上体を起こす。
「あいつ寝てんじゃん」
地居が瀬文を見る。
「だからか」と当麻が呟く。「だから妙にほっとするだよね、ここにいると」
「何それ?」地居が当麻を睨む。
「妬いてんの?」
「心配してんだろ。行くよ」
地居は当麻の手を乱暴に掴んで瀬文の病室を出て行った。

当麻は病室に入るとベッドに潜り込んだ。
「疲れたから寝ま~す」(雅ちゃん風な口調で)
「じゃあ俺も帰るわ」
地居が当麻の枕元の椅子から立ち上がって出ていこうとするが、また戻ってきて、寝ている当麻の上に覆いかぶさる。当麻に顔を近づけるが、右手で頬を打たれた。当麻がチチチとダメだよの舌打ちをし、
「何すんの」
と怒る。
「痛ぇ」地居が切れた唇を押さえる。
「俺なんか変なことした?」
「エロオヤジ」
「あのさ。俺たち付き合ってんだよね?」
「そうだね。そうだった」
「だったら……」
「ハイハイ」
と当麻が起き上がってチューと口を尖らせる。地居が上体をかがめて当麻に顔を近づける。
「当麻さん、お熱測りますよ」
看護婦がやって来る。地居は咄嗟に直立不動になり、当麻はドアと反対方向をに顔を向け寝たフリをする。
「キスだ!」
看護婦が言う。

「イテテテ」
野々村係長が未詳の自分の席の天井に背伸びして、雅ちゃんの写真を奥さんの写真の上に重ね貼りする。そこに雅ちゃんが入ってきて、
「こおっち!」
と野々村係長を呼んだ。
「雅ちゃん!」
野々村係長が笑顔で雅ちゃんを迎える。
「私、こおっちに言っておかないといけないことがあるの」
「何?何々?」
「私、猪俣さんと結婚する」
「うん。うん?」と不可解な返事をする。
「今、ホッとした!」
雅ちゃんが怒る。
「うん。うん?」
また野々村係長は不可解な返事をする。
「ウッソ~」
雅ちゃんが結婚指輪を指から外す。野々村係長は状況が飲み込めない。
「実は私ね、司法試験受かってたの。先月から有給とって密かに司法修習生やってんの」
「ゲッ」と野々村係長。
「で、今の雅さんが、銀座で雅さんを名乗っていた前の前の奥さんから奪ったように、雅もこっちを奪還するのだ!」
雅ちゃんが野々村係長に人差し指をつき出した。
「こおっち!こおっち!」
奥さんの雅が未詳にやって来て(顔は出ませんな)、
「I Miss You!」
と野々村係長に抱きついた。それを冷ややかな目で雅ちゃんが見る。
「何これ。アツアツじゃん!ヒートテックじゃん!赤道小町じゃん!」
「テヘ」と野々村係長が照れる。
「見てろよ!※△○」
と雅ちゃんが宣言する。

当麻の実家で覆水盆に返らずと当麻の祖母が半紙に書く。
そこに当麻が帰ってくる。
「どうしたの?退院したの?」
祖母が訊く。
「……逃亡中」
「何から?」
「え~と……何だっけ?病院とか男とか、色々」
祖母はあ然とする。
「すぐに帰っから」
「そう」
祖母は状況が飲み込めないまま、とりあえず頷いた。

当麻は自分の部屋で、これまでに撮った自分や家族の写真を見返した。ランドセルを背負った陽太の写真で手が止まる。そこにニノマエの顔が重なり、当麻の目から不意に涙が落ちる。
「なぜ?」
当麻が困惑する。
「なんで泣いてるの?」
気になって当麻の部屋に上がってきた祖母が尋ねる。
「分かんない」
「まだショックが癒えてないみたいね。ビビってんのかしら?」
「ビビってねえし!」
「その元気なら大丈夫」
祖母が笑う。
当麻がメモが入った空き缶を引き寄せて読み始める。祖母が何を見ているか訊いた。
大学時代の日記だと当麻は答えた。
「汚ッ!メッサ汚ッ!」
祖母が当麻の日記を横から覗く。
「うっさいなあ」と当麻が愚痴り、祖母に尋ねる。
「あのさ、左利きとあたし、昔から仲よかったんだっけ?」
「地居君のこと?あんたが京大に行ってたときからのことだから、そうなんじゃないの?」
祖母が京大時代の当麻の写真が詰まった箱を手渡した。
「こんなに?」
当麻が写真を見る。
「全部彼が撮ったんでしょ。左利き用のカメラで」

その彼はその時、ニノマエが寝かされている牢屋の前に立って、体をゆすりイカを食べながら、
「早く死ねよ、ニノマエ……」
と呟いた。ニノマエの目がうっすらと開き、包帯を巻かれた右手を鳴らそうとする。この時、一瞬、指の動きが下手な編集みたいに飛んだ(これは地居の視点でしょう)。ニノマエの脈拍が落ちていき、アラームが鳴る。そして脈拍も血圧もゼロになった。
「おっおっお~!」
地居が嬉しそうに笑う。

地居が瀬文の病室に駆けこんできて、瀬文を起こした。
「おい!おい!俺のこと覚えてる?」
地居が尋ねるが、瀬文は朦朧として何も答えない。
「おい!おい!当麻紗綾って覚えてる?」
瀬文が見えない目で声のする方を睨んだ。
「キモイなおっさん!」
地居が罵り、
「俺の紗綾の記憶がお前に残ってるってだけで、ゾッとするわ」
と言うと、両拳を瀬文のこめかみに当てる。
「消え~る!消え~る!消え~る!」
瀬文の頭から当麻との記憶が失せていき、最後に瀬文は気絶した。地居が吐き捨てるように言う。
「殺してやってもいいんだが、俺はアンタと違って平和主義者でね」
そして勝ち誇ったように笑い、パイプ椅子を蹴り倒して病室を去った。

その頃、当麻は普段着のまま病室のベッドに寝ていた。
「ネエチャン……」
ニノマエが当麻を呼んだ声が蘇る。家族との写真。弟が呼ぶ声。
当麻は起き上がると病室を出た。
廊下の脇で馬場の声がする。
「ニノマエが死んだ」
馬場管理官が猪俣と鹿浜に伝えた。
「結局、何も掴めなかったか。これで定年までお気楽、極楽だなあ」
鹿浜が悔しがる。
「逆じゃろ」と猪俣が言い返す。「死ぬまでわしらこの事件を追わざるをえんじゃろ!」
「死ぬまでデカだ。馬鹿デカだ!」
と馬場が罵る。
「上等じゃねえかよ!」と猪俣と鹿浜が叫んだ。
当麻はそれを聞いて病院を出て行った。

当麻は未詳に戻った。記憶の断片を思い出そうとするが思い出せない。
「ダメだ」
と当麻は硯に向かった。だが筆は動かない。振り上げた筆から墨が滴る。
「ダメだ。ダメだ。何も思いつかない」
滴った墨が床に落ち、星の形になる。それを当麻が見た。
「覚えている」
耳の裏の痣。当麻の消された記憶の断片がつながった。当麻は半紙に筆を下ろした。そして書かれたのは
「痔」
間違えたのでやり直し。
「痣」と書き直す。
「覚えてる」と当麻は言い、
「未詳」と書く。
続いて「SPEC]、「野々村係長」、「美鈴」、「地居」、そして最後に「瀬文」と書く。
「忘れられるわけがない。こんな大切なこと」
当麻は足の下に敷いた半紙と自分の写真をちぎり、それを集めて胸に押し付ける。
「わたしのココが全部憶えてる」
そして投げた。
「頂きました」
当麻がペンチを使って左手のギブスを取り外す。

同じ頃、瀬文の呼吸が激しくなり、心拍数が上がり、200を超える。瀬文もデカ魂の気合で消された記憶を取り戻した。

翌日。新宿を歩く地居の携帯に当麻からメールが届く。地居がメールと開くと

プロポーズの返事、聞きたい?聞きたい?

と書かれていた。したり顔で地居は教会に向かった。

教会に地居が入る。
「お待たせ」
当麻はすでに来ていて十字架が白く輝く祭壇の脇に腰掛けて、マクドナルドを大量に食べていた。
「いい教会でしょう?」と当麻が訊く。
「いい感じじゃない。式を挙げるには」と地居が答える。
「二人で行った京都の下鴨のセントマークス教会に似てるなと思ってさ」
「ああ、そうだね」
地居が当麻の横に腰掛けると、当麻が地居を見て
「ニコ」
と初めて笑った。地居はその笑いの真意が分からず、プロポーズの返事を急かした。
当麻の顔から笑みが消え、
「返事の前に一つ聞いていい?なぜ私と結婚したいの?」
と尋ねた。
「決まってるだろ」と地居が笑って立ち上がる。「キミが好きだからだよ。心から愛している。ずっとずっと想い続けてきた」
その甘い言語を聞きたくないかのように当麻はうざったそうな顔をして、耳に手をやる。
「でもさぁ、どう考えても私たち付き合ってないみたいなんですけど」
「え?何言ってんの?」
地居が慌てるのを隠すように笑う。当麻は最後の一撃を食らわす。
「京都の下鴨にセントマークス教会なんてないし」
それを聞いた地居の顔から笑顔が失せ、
「そうだっけ?」ととぼける。
「はっきり言うけどさ、私はアンタのことが好きじゃない!過去一瞬も好きになったことはないし。これから先、一瞬も好きになることはニャーだ」
「そんなことないよ」と地居が言い返す。「何十回と遊びに行ったし、写真も撮った、手紙のやりとりもした」
「それはこれのこと?」
当麻がキャリーバッグから(「頂く」ために)破って戻した自分が写った写真を見せる。
「そうだよ」と地居が答える。
「ドンダケー!」と当麻が棒読みで叫ぶ。
「これはねえデート写真て言わねえよ。ストーカー写真って言うんだよ」
と吐き捨て写真を床にぶちまけた。
「あんたと付き合ってるって記憶や証拠を色々捏造したみたいだけど、写真だけは捏造しきれなかったみたいだね。あたしのストーカーさん」
当麻が振り返って地居を睨む。
「バレたか」
地居が照れ笑いする。
「キモ」と当麻が罵る。
「俺ってそんなにキモい?そんなにひどいビジュアルじゃないと思うんだけどな」
地居が自分の顔を触る。
「キモ!キモ!キモ!キモ!砂肝!うな肝!その根性が一番キモいんだよ!」
「うな肝ってあるの?」
「人の記憶を奪い、都合よく書き換えすべての人間をあんたの思いどおりにしようと思ったけようだけど、私はあんたの思いどおりにはならない!記憶を書き換えられようと、私は私なんだよ!」
「僕はキミと会って百年の孤独から救われた」
今まで黙って聞いていた地居が話しだす。
「今度は僕はキミを孤独から救ってあげたい。何も考えず僕のものになれば、今後苦労することはない、幸せに暮らせる。辛いことや悲しいこと味わうことは決してない。人間が苦しんできた煩悩から解放してあげられる」(辛い記憶や悲しい経験を消せるという意味?)
「辛いことや悲しいことだって私の財産だよ」
当麻が言い返す。
「ほお、じゃあキミはこれから弟殺しの苦悩を背負いながら生きて行くんだね。この人殺し!」
地居が当麻を責めるが、当麻は怯まない。
「私は私の罪を背負って生きていく。どんなに辛くてもその痛みからは逃げない。そんな痛みより、陽太への想いを忘れる痛みの方がもっとデカイわ!人は痛みや苦しみを味わって、苦しんで、乗り越えて、それを優しさに変えていくんだよ」
地居がウザそうに当麻から目を逸らす。
「私や瀬文さん、美鈴ちゃん、アンタのエゴのために死んでいったたくさんの人たち、そして陽太。その痛みの分だけ怒りMAXだからよ。罪は償ってもらう」
「罪?何の罪だよ?」地居がキレる。「証拠あるの?証人は?瀬文の記憶も美鈴の記憶もぜんぶ消した」
そして嘲るように自分の頭を指でコツコツと叩いた。
「キミの記憶はもはや妄想ってわけだ」
「卑怯者!」
当麻が拳銃を抜いて地居に向けるが、地居に拳銃を蹴り飛ばされ、頭を掴まれて壁に叩きつけられる。地居は倒れた当麻の頭をまた掴んで持ち上げると、また床に放り投げ、さらに倒れたところを蹴りつけた。当麻が苦痛の悲鳴をあげる。そして逃げようとする当麻の腕を捕らえると、また床に倒して右手を足で力いっぱい踏みつけた。
「こっちの手も潰してやる!」
当麻の右手から血がにじむ。右手から地居の足が離れた隙に当麻が立ち上がって逃げようとするが、また掴まれて壁際に倒される。興奮した地居が自らを落ち着けるように自分の頬を引っ叩き、当麻の方に向き直ると、早口で喋り出す。
「ここでキミを殺しても、目撃者の記憶を書き換える。誰かが僕の代わりに罪を償ってくれる。真実なんてものは無いんだよ。仮に真実なんてものがあったとしても、すべて時の流れの向こう側だ。真実は人に記憶された時から変質していく。記憶は年老いて薄れる。死んで消え去る。真実とか記憶とか、そんなくだらないものにこだわっているなんて、人間て馬鹿だよな~バーカァ!」
と当麻を怒鳴りつけると同時に
「馬鹿で上等ォ!」
瀬文の叫び声がする。
「当麻から離れろこの野郎」
美鈴に手を引かれた瀬文が地居に拳銃を向けている。
「瀬文、美鈴……」
地居が呟く。
「残念ね。いろんな記憶はこの手で取り戻したわ」
と美鈴が言う。当麻と瀬文の消された記憶を、病室の枕を触ってビジョンとして蘇らせたのだった。
地居が美鈴を恨めしそうに睨みながら、口に指を突っ込み、その指を舌で舐め回す。
「キミのSPECごと消しておくんだったな。まあいいや後でまた消すことにしよう」
「それは無理だね」と瀬文が言う。「何度もお前にやられたが、俺の記憶は結局消えなかった。なぜだか分かるか?人間の記憶ってのは頭の中だけにあるわけじゃねえ。ニンニク臭え人間のことはこの鼻が、この傷の痛みは体全部が覚えてるんだよ。テメエはムカツク、虫が好かねえ、生理的に受け付けねえ!!だから勘で分かるんだよ。生かしておいちゃ、この世の中のためにならねえってな!!」
地居がせせら笑う。
「警察が勘で人を裁くのか?犯罪者と一緒だな」
「一緒じゃねえ。やって良いことと悪いことは自ずから決まってるんだ。デカ魂ナメんじゃねーぞ!この頭デッカチ野郎!!」
フンと地位鼻で笑う。すると黒い人影が目にも留まらぬ速さで美鈴を突き飛ばし、瀬文の銃を持った右腕に関節技を決めて消えた。瀬文の右腕がだらりと垂れる。
「折れたじゃねえか。これもお前の力か?」
瀬文が拳銃を左手に持ち替えて地居に向ける。地居は臆することなく不敵な笑みを浮かべている。また黒い人影が現れ、瀬文の銃を蹴り飛ばし、瀬文の体に攻撃を加えた。
地居が声を上げて勝ち誇ったように笑う。
「俺の力じゃないよ。この教会の周りには俺を守るSPEC HOLDERが何人も潜んでいる。お前らは俺をおびき寄せたつもりかもしれないが、取り囲まれているのはお前らなんだよ、バーカァ!」
次の瞬間、黒い人影が瀬文の体に猛攻撃を浴びせる。瀬文は倒れると、血を吐いた。そして地居がSFチックな銃を手にした。
「便利だなぁ、こうやって武器を渡してくれるSPECの持ち主もいる。楽ぅ~」
まず地居は当麻を狙った。
「紗綾、僕のモノになってくれ。そうすれば、そこにいる二人の命も助けるよ」
「撃つなら撃て!」
当麻が怒鳴った。
「撃つならこっちを撃つのよこのストーカー野郎!」と美鈴が叫ぶ。
「聞いてたのか?」
地居が美鈴を向き、
「ストーカー野郎じゃない。僕の名前は津田助広です。これからも宜しく」
髪をかき上げて美鈴に頭を下げると、再び銃口を当麻に向けた。
「上等だァ、津田ァ!撃つなら俺を撃て!」
瀬文が叫ぶ。地居がゆっくりと銃口を瀬文へ動かす。
「俺が全部気合で止めてやる!」
「SPEC?」と美鈴が訊く。
「馬鹿野郎!気合だァ!」
「手ェ折れてんだろう?」と地居。
「ゴットハンド大山倍達!」
瀬文はそう叫ぶと両腕をぶらぶらさせたまま立ち上がると、うりゃああ!と気合を入れるが、腕は上がらない。
「うあやっぱりピンチ!」
美鈴が椅子の影に引っ込む。
「ピンチじゃないよ」
地居が十字架を背に立ち、瀬文に向けて銃を構える。
「ゲームオーバーだ」
「見えた」
十字架の光でぼんやりと見えた地居の影に、瀬文は「7」号奥歯を舌で抜いて吹き飛ばした。その奥歯の先が地居の額に突き刺さる。
「やるじゃん、瀬文」
と当麻は壁際から立ち上がって、瀬文のところへ行き、
「あたしが死ぬまで勝負は終わらねえよ」
祭壇に倒れて頭を押さえてもがく地居に言う。
「命あるかぎり、すべては変えられる。希望は絶対に消えない。テメエ独りで千年の孤独に沈んでろ!」
瀬文の顔に左手のギブスを差し出し、噛めと命じる。瀬文が言われたとおり噛む。今まで苦しんでいた地居も立ち上がる。当麻がギブスから引き抜いた左手には大きなトリガーのついた拳銃が包帯で巻きつけられていた。それを瀬文の頭に乗せて地居に照準を定める。

警視庁の霊安室。ニノマエの遺体が置かれている。野々村係長がニノマエの骸に手を合わせる。が、次の瞬間、驚愕の表情に変わり、恐れおののくように壁により、松葉杖を床に落とした。

「グダグダうっせえんだよ、このミジンコどもがァ!死ね」
地居が銃のボルトを引き、赤いスコープで当麻を狙う。
「左手動け!」
当麻が叫ぶと、左手が動いてトリガーが引かれ弾が発射された。その間に地居も銃を連射する。不意に時が止まる。そして時が戻った直後、地居が放った銃弾がすべて地居に返ってきてその体を引き裂いた。
「馬鹿な……」
地居が祭壇に倒れた。因果応報。地居がニノマエを使って志村にしたことを自分がされた。
「何が起こったの?」
美鈴が立ち上がる。
「ニノマエが生きていたのか?」
瀬文がぼやけた目であたりを見回す。
「ニノマエ?チクショー!」
口から血を吐きながら、地居が叫ぶ。
「出てこい……」
と言った地居が出てきた何かを見て狼狽する。
「ニノマエじゃない。じゃあ誰だ?誰の仕業だ?」
「ニノマエじゃない?」と瀬文。
「何?何の話?」と美鈴は状況が分からず混乱する。
「まさか……」
地居は白く光る十字架の下で生き絶えて倒れた。その横には1枚の当麻の写真があった。

SPEC 承ノ回へ
祈ル捲土重来

教会の外にCBCの不死身のロボット店長が餃子の屋台を出していた。
「もしもし公安部公安零課、津田です」
オールバックに、サングラスとフライトジャンパーという格好の津田が携帯に出る。
「予定通り状況終了。帰還します」
津田は屋台から忽然と姿を消した。

まさかニノマエが新たな津田になったのか?

エンディングのいろんなオブジェが数珠つなぎになっていくイメージが記憶が消えるイメージだったとはやられました。ニノマエのSPECが相対性理論の双子のパラドクス、高速で動けば動くほど周囲の時間は相対的に遅く進むといる父が教えたことに起因しているとは、やられました。地居が志村と同じように殺されたのは上手い回帰というか因果応報です

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コメント

早い更新、ありがとうございます。もう、「どこから記憶をいじったんだ」って思うくらいでした。
野々村課長が一に合掌してる後の驚いているシーンが気になりました。本当に映画化はないのでしょうか
「ケイゾク」の続編が「SPEC」と言われてましたが、「真実」についての話しだけがまさに「継続」されていたんだと思いました。

がきょうさん、どうもsun
今の視聴率からすれば、映画化はないでしょう。ただ深夜の再放送などで人気が出れば映画化や続編もありだと思います。あれは10時ではまだ内容的がぶっ飛びすぎかもしれません。

ニノマエは生きてると思います。零課も全滅していなかったようで、続編も可能という流れですね。

確かにこのプロットを仕組んだ地居が倒されただけで真実は闇の中です。

映画化ってないかなぁ。
雅ちゃんも台詞で「映・・・」で切ってる場面もあったんだけどなぁ。
やっぱり、ないかなぁ・・・

がきょうさん、どうもsun
雅ちゃんが言ってる「エ…」って何を言ってるのよくわからなかったのですが、映画の映。なるほど!
映画化されたら観に行きます。

視聴率、どれくらい制作側が期待してたか知りませんが、前作のうぬぼれ刑事より良かったみたいです。(金曜ロードショーに救われたという話もありましたが)。

http://blog.livedoor.jp/domesaka/archives/1215619.html

0901 ラブシャッフル    8.8
0904 スマイル        10.2
0907 オルトロスの犬    8.4
0910 おひとりさま     9.4
1001 ヤマトナデシコ七変化  8.2
1004 ヤンキー君とメガネ  11.3
1007 うぬぼれ刑事    8.1
1010 SPEC        10.5
------------------
0901~1010           9.36

うぬぼれ刑事も面白かったですが、SPECには敵いません。加瀬亮の存在感が凄かったです。

DVDが売れれば映画化かシーズン2の可能性は「高まる~」ですね。

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