JIN-仁-第8話
野風に子が生まれ、ニッポンが生まれ変わる。いい話じゃないですか。中谷美紀の鬼気迫る演技に圧倒されました。
1867年秋、橘恭太郎のスットコドッコイが仁と龍馬の写真を持ち出したから上役に伝えるのかと思ったら、その写真を燃やして証拠隠滅し、上役に仁と龍馬はもう無関係だと嘘の報告をしていました。幕府に盲目に仕える旗本じゃないんですね。ちょっと見直しました。
龍馬は内戦の危機を回避するため土佐を利用することにする。土佐藩参政・後藤象二郎に近づき、薩長が武力で幕府を倒せば、土佐にその後の国政に参画できる余地はなくなる、そこで薩長に武力倒幕をさせず、土佐が国政の舵取りができるよう方法があると言った。
徳川慶喜に政権を朝廷に返上する、いわゆる「大政奉還」をさせることであった。朝廷に政権を帰してしまえば、薩長が徳川を討つ大義名分がなくなる。そこで後藤象二郎が土佐藩主・山内容堂に建白書を将軍慶喜に出させ、慶喜に大政奉還を受け入れさせるよう説得すればいい。そうやって龍馬は後藤象二郎を動かした。
龍馬は船の中で「船中九策(史実では船中八策)」を書き上げ、これは凄いぜとよ、先生と身震いした。
仁は龍馬の暗殺を阻止しようと龍馬のように歌を詠んで送ろうとするが、頭痛に襲われた。それでも何とか書き上げた。
土の龍 道に果てつる 寒き京
ご注意を
それを飛脚に託した。
呪いシート(ノイロシート)は脳外科で使うんですね。久留米の田中久重が電気ランプの手術用ランプを完成させて仁のもとに送ってきた。さすが東芝の創業者は仕事が速い!
野風が子供が生まれてそれが未来の未来(ミキ)へとつながることを願っていると咲さんに言い当てられる仁。仁が望むのは、野風を助けたことで消えてしまった未来(ミキ)が、新しい形で生まれ変われることであった。咲さん的には複雑ですね。
仁友堂に野風が出産のためにやってくる。今のところは母子ともに順調。しかし逆子になってしまっていて、整体術で整えようとする。臨月になってからでは珍しいことであった。しかし帝王切開は難しい。麻酔を使うと子が死んでしまい、麻酔を使わずに帝王切開すれば母子ともに死んでしまう危険性があった。
西洋医学所の松本良順から、将軍が仁を幕府に仕える奥医師になって欲しいと言っている旨が伝えられた。仁は二の足を踏むが、良順は、和宮のアンドーナツにヒ素が盛られて、その下手人として仁が捕らえられたときに慶喜に恩赦の嘆願書を書いてもらった恩があり、さらに龍馬が倒幕派とされていることから、仁と仁友堂が幕府に睨まれずに江戸で苦境に置かれないためには、奥医師になっておくべきだと忠告した。そしてそれを立ち聞きしている別の奥医師がいた。三隅俊斉。ヒ素事件の犯人だ。
西洋医学所を去ろうとする仁に三隅は声をかけ、自分は野風の乳がんを見つけられずに藩を追われて奥医師になったと要らぬ説明をした。これからもご指南くださいと笑った。そうですかと仁は会釈して玄関へと向かう。その背中を三隅が睨む。
もうじきすべてを失いますよ、南方先生……
龍馬と東修介、そして後藤象二郎が、永井玄蕃頭(大政奉還に尽力した一人)の屋敷から出てきたところを薩摩藩士たちに囲まれ、京都の薩摩藩邸へと連れて行かれる。そこで大久保一蔵(大久保利通)から、土佐が大政奉還を建白した件を問いただされ、土佐の十八番は裏切りかと大久保が剣を抜こうとするが、龍馬がそれをなだめる。大政奉還の建白は茶番だと龍馬が言う。龍馬は薩摩が裏で密かに朝廷から倒幕の勅許を得て武力で幕府を倒すのは体裁が悪い。そこで大政奉還を願い出て、それを幕府が認めなければ、武力倒幕はやむなしという機運になる。どうぜ幕府は大政奉還を受け入れはしないとしめくった。
すると西郷吉之助は龍馬に、先ほど薩摩は官軍になった、朝廷からの倒幕の勅許がおりたと伝えた。龍馬が慌てる。挙兵は数日待って欲しいと西郷に頼む。薩摩のことは薩摩が決めもすと西郷が一蹴する。龍馬が西郷の前に進み出る。
助けられた者は助けられた恩を感じる。力でねじ伏せられた者はねじ伏せられた恨みを忘れん。戦は戦を呼ぶ。どっちが新しい国をつくりやすいと思うがぜよ、西郷さん!
やっぱり、それが本心でごあしたかと西郷。勅許を得たというのは西郷の茶番であった。龍馬は一本取られた。薩摩藩士が怒りの声を上げて龍馬を囲む。龍馬はおもむろに湯飲みを取り上げて、藩士たちに見せる。
みんなが一生懸命やっちょるがは、この茶碗の中のケンカじゃ!こんなモンはほれ、指一本で倒されてしまいぜよ。国中の戦が長引けば、列強につけ込まれ、植民地とされるがじゃ。倒幕がかなっても、属国になっては、元も子もないろう。頼むき、まこと利とは何たるか……
そこで西郷が龍馬をさえぎる。
ヒトは利だけ生きるわけではごわはん!ヒトには情ちゅうもんがごわす。己の裏をかいた相手を信じるこつはできもはん。ねじ伏せられんかったこつを、ありがたがるようにはできておりもはん!
薩摩藩士たちに連れ出される龍馬が西郷に訴える。南方仁は長州と幕府の戦いを見て、どっちがどっちかわからないと言った。その意味をもういっぺん考えてくれと。
宿に戻った龍馬が中岡慎太郎に大政奉還の建白のことを教えると、自分まで騙していたのかと激昂する。そして東に龍馬はお前のことも騙していたんだぞ、文句のひとつも言えと迫る。しかし東は大政奉還は悪くないと思うと静かに答えた。徳川が大政奉還を受け入れなかったらどうするつもりだ、土佐を徳川と心中させる気かと中岡慎太郎が龍馬に詰め寄る。徳川は絶対に受け入れる…と思うと龍馬。何を根拠にと中岡慎太郎が呆れた顔で聞く。南方仁が、これが正しい道じゃち言うたからじゃと龍馬が言いにくそうに答える。はあと中岡に聞き返される。そこに土佐藩士が飛び込んでくる。在京(当然京都ね)四十藩の重臣が二条城に招集されたと伝えに来た。
キター!!と龍馬が叫ぶ。
野風の出産が始まる。咲が陣痛の間に逆子の子供を回転させようとする。
咲様は真っ白でありんすなあと野風が言う。あちきが子を産めば、先生の思い人をもう一度作ることになるやもしれんせんのに。野風が仁とミキのことを知っていることを咲は知った。わたくしの心は真っ黒でございますよと咲が答える。いつもいつもつまらぬ嫉妬ばかりで、その度に己が嫌になります。野風さんにはいつも、とてもかなわぬと(思っておりました)。野風さんは、何も見返りを求めないではないですか。自分にはそのような気持ちにはなれぬと。
しかし子供が頭ではなく手から生まれてきた。子供が横向きになって出てきたのだった。不安げな顔を向ける野風に、仁は大丈夫、手はありますと微笑んだ。
仁は子供を諦めて野風を助けることを他の医師たちに告げた。いずれ死んでしまう野風は子を産みたいと言っていたじゃないかと佐分利が意見する。他に方法がないんだと仁が声を荒げた。麻酔なしの帝王切開でも母体が手術中に息絶えれば子供が助からない危険性もある。母体を助ける以外に道はない。苦渋の選択であった。
手術室に連れて行かれた野風がなぜかと咲に息を切らせながら尋ねる。こちらの方が治療がしやすいからだと咲が答える。仁が笑顔で入ってきて、まずは痛みを抑える処置をすると伝える。咲が怪訝がまなざしを仁に向ける。子に害のない痛み止めはないと……野風が仁に言う。ごく軽いものなので大丈夫ですと仁が嘘をつく。そうとわかった野風が助けを求めて咲を見る。咲も迷っている。野風が花魁の時のような笑みを浮かべて仁を見る。先生は、嘘が下手でおざんすなあと言うと、台に置かれていた麻酔を手で払いのけて懇願する。
腹を切っておくんなんし。このまま腹を裂き、子を取り出しておくんなんし。
切るのなら麻酔が必要になりますと仁はそれを拒否する。その麻酔は子供は耐えることができま……
野風が悲鳴のような声を上げて訴える。
ならば、このまま切ってくんなんし!
あちきは郭の中の、篭の鳥でおざんした。行きたいところにも行けず。会いたいお方にも会えず。けんど、この子は違いんす。野山を駆け回ることも、愛しき方と肩を並べ歩くことも、何だってできんしょう。天かける鳥のごとく、生きていけんしょう……
どうか、あちきの夢を奪わないでくんなんし!
咲が口を開いた。帝王切開をいたしましょう。戸惑いの表情をうかべる仁に咲が念を押す。大丈夫です。おなごは子を守るためなら、どんな痛みにも耐えられまする。
あちきは死にんせん、この子を抱くまでは決して死にんせんと野風が仁に訴える。
仁は帝王切開の準備を指示した。ここで登場、田中久重の手術用電気ランプ。実は帝王切開はほとんどやったことがないと仁が咲に不安を漏らす。咲は震える仁の左手に両手を触れないように包み込む。ミキさんが必ずお守りくださいます。どうしてそんなことがかるんですかと仁が聞く。先生をお慕いしているからですと咲が答える。ミキさんはたとえ己が消えようとも、先生の幸せを願っているはずだからでございます。野風さんと同じように。(咲さん、ええ娘じゃないか)
まいりましょうと咲が言う。はいと仁が手術台に向かう。
二条城で将軍慶喜と諸藩の重臣たちとの評定が行われる中、評定がどうなるか、大政奉還となるのか、不安を抑えられない龍馬は酒を持って宿から出ると、夜の寺の境内に座り込み仁との写真を眺めた。
死にかけちゅう者のことは先生が一番ようしっちゅう。国も一緒じゃ。死にかけちゅう国を生き返らせるには、先生の言うことが一番正しいじゃろうと信じたぜよ。
龍馬が夜空に向かって叫ぶ。わしゃ道を間違ごうたんじゃないかえ、先生!こん国は生まれかわるがかえ先生!
野風の膨らんだ下腹にメスを入れて裂いて、子宮から子供を取り出すところは、すごく痛そうだし、むりやり引っ張り出そうとているようで、緊迫感がハンパなかったです。
野風の子供は取り上げられた。だが泣かない。咲が赤子を逆さにして尻を叩いた。泣きなさい!赤子はうんともすんとも言わない。また咲が尻を叩く。仁たちが固唾を呑んで見守る。そして赤子は口から水を吐いた。赤子が産声を上げた。野風の目から涙から落ちる。
咲が野風に赤子を見せようとすると、野風が意識を失っていた。子宮からの出血。仁の脳裏にお初の手術がDICで失敗したときのことがよぎる。仁は頭痛に襲われる。仁は頭を押さえながら、佐分利に出血点を見つけるように指示し、咲に野風への輸血の準備を命じた。野風の脈が停止する。仁が心臓マッサージを始める。野風の脈は戻らない。仁が叫ぶ。
子供を抱くんじゃなかったんですか!子供が歩くのを見るんじゃなかったんですか!声を聞くんじゃなかったんですか!絶対に死なないってそう言ったじゃないですか!紙は乗り越えられる試練しか与えないんじゃないんですか!(これはミキに言ったのか?)
野風の脈が回復し、出血点が見つかる。仁は止血を指示する。
薄暮の寺にたたずむ龍馬のもとに後藤象二郎からの手紙を持った土佐藩士が来る。龍馬はそれを奪い取ると、乱暴に開いた。そこには「大政奉還」の文字があった。やったぜよ、先生……そして叫んだ。夜が明けたぜよ!
眠る野風の傍らで、咲が野風の赤子をあやす。あなたはね、わたくしの恋敵をおつくりになる方なのですよ。わたくしとしたことが、大変な方を取り上げてしまいました。あなたに、ひとつだけお願いがあるのでございますよと、咲は赤子の顔を覗き込んだ。
どうか、南方仁という方に、傷つくことが多いあの方に、誰よりも幸せな、今度は誰よりも幸せな、未来を与えて差し上げてください。
<咲さんに完全にやられました>
<伊右衛門の宣伝、洒落ているけど(銀とかよく出来ている)、江戸時代なのにガラスのコップとはこれいかに?>
寺の境内で大の字に寝ている龍馬ののど元に刀の切っ先が触れる。東の剣であった。東は刀をしまうと、朝の空を見上げた。もうよいですよね、兄上。
野風の子供は安寿(フランス語では天の使い)と命名された。野風を夫が安寿と彫られた銀のスプーンを子供に与えた。西洋には生まれた子供が一生豊かに暮らせるように、銀のスプーンを誕生の祝いに与える風習があると野風が説明する。
それではっとする仁。ミキが言っていたのを思い出した。死んだ日と生まれた日が同じなのはまるで坂本龍馬みたいだと。仁は急いで勝海舟のもとに向かった。そこで勝海舟から龍馬が勝に送ってきた手紙を見せられた。大政奉還の建白のもとになった船中九策であった。そこには勝たちが龍馬に教えた議会制などだけでなく、九つ目の策が記されていた。勝には教えた覚えがまったくないという。
それは、皆が等しく必要なる医療を受けられ、健やかに暮らせる保険なる仕組みをつくること。
仁が泣いた。いるはずのない俺の足跡が歴史に刻まれていく。坂本龍馬の手で。歴史は変えられないわけじゃない。
<いやあ泣けた>
仁は勝に龍馬の誕生日を尋ねた。たしか十一月十五日だったけかなと勝は答えた。あと1ヶ月しかないと仁は身支度を整えて京都に向かおうとするが、咲に龍馬が暗殺されると言うとすると、また頭痛に襲われる。
龍馬は大政奉還の一件で薩摩の恨みを買い、恭太郎の隠蔽工作は、仁が龍馬に飛脚を通じて手紙を出したことでばれてしまった。
来週、龍馬は暗殺はなしのようですね。
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コメント
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>どうしてそんなことがかるんですかと仁が聞く。先生をお慕いしているからですと咲が答える。
こういう唐突な愛の告白もいいです(笑)
野風が仁の嘘を見破るところも良かったです。帝王切開は、実際はもっと正視にたえないくらい絶叫すると思うので(エイリアンが腹から出てくるときくらい)、ある程度抑えた演技だと思いましたが。
誕生日と死んだ日が同じだからって普段は別になんとも思いませんが、タイムスリップものだとなんだか意味ありげで面白いですね。
投稿: おじゃま丸 | 2011/06/06 10:19
伊右衛門のコップ、たしかに違和感を感じました。あんなきれいな、薄いガラスのコップ、できてたのかなぁ。。
投稿: しん | 2011/06/06 12:02
おじゃま丸さん、どうも
>帝王切開は、実際はもっと正視にたえないくらい絶叫すると思うので(エイリアンが腹から出てくるときくらい)、ある程度抑えた演技だと思いましたが。
ジュリアス・シーザーが腹を切って取り出されたという伝説から「帝王(カイザー)」切開というそうですが、自分には絶対に無理です。
>誕生日と死んだ日が同じだからって普段は別になんとも思いませんが、タイムスリップものだとなんだか意味ありげで面白いですね。
確かになにか意味を含めてるでしょうね。
しんさん、どうも
あんな薄いグラスは無理ですよね。他にもタイムトリップした人がいたのでしょうか。
投稿: 竹花です。 | 2011/06/06 13:16