アインシュタインは機械翻訳の夢を見るか?
目下確定申告書の主な収入源に「翻訳」と書いている者として、翻訳者の人はよく言った!と喝采を送りたいです。偉い人にはわからんのですよ。
とはいえ、わからないとメルトダウンを起こして首が飛ぶか、会社が消えてしまうわけですが。納期を強行して失敗する例は、中国の高速鉄道の事故を見れば明らかでしょう、埋めたってバレます。
海外である程度売れているのに日本でまったく売れないという洋ゲーは翻訳に何かしら問題があると思います。(あんなに面白い「バトルスターギャラクティカ」が日本であまり売れなかったので、欧米と日本の価値観の差はあると思います)
問題の本(今は回収されて、改訂版が出るそうです)
その凄さを示す翻訳↓
それぞれ400ページを超す上下2巻の大著であり,注目の新刊だが,下巻の翻訳がすごいことになっている。
「彼は,時には,やかましくこっこっと鳴って,終わりに全体の出来事が「最もおもしろい」と断言した。」(p.39)
「ボルンの妻のヘートヴィヒに最大限にしてください。(そのヘートヴィヒは,彼の家族に関する彼の処理,今や説教された頃,彼が「自分がそのかなり不幸な回答に駆り立てられるのを許容していないべきでない」と自由に彼に叱った)。以上は,彼が目立つべきであり,彼女が言ったのを「科学の人里離れている寺」に尊敬します。」(p.41)
「アルバート・アインシュタインの爆発するようなグローバルな名声と芽生え始めたシオニズムは科学の歴史の中でもユニークで,どんな分野にも,本当に,顕著であった出来事のため一九二二年春に集中。一種の大規模狂乱を喚起して,ツアーしているロックスターをぞくぞくさせるへつらいを押す東とmidwestern合衆国を通る壮大な二ヶ月の行列式書。世界は,以前一度も見たことがなくて,おそらくユダヤ人のための再びそのような科学的有名人のスーパースター,また,たまたまヒューマニスティックな値の優しいアイコンであった人,および決してどんな生きている守護聖人も見られないつもりだった。」(p.45)
以上原文のママ。やはりアインシュタインの本は私には難解すぎるようだ・・・???
極めつけはp.61.。
「驚異的な場面だったが,それはクリーブランドで超えられていた。数数千が,訪問代表団と会合するためにユニオン列車車庫に群がった,そして,パレードは二〇〇台の酔っぱらっていて旗の包茎(ママ)の車を含んでいた。
なにか,ダリとかシュールレアリズムの絵画のような情景であるが・・・
翻訳した人が裏側を曝露。
私は本書の上巻の5-11章の翻訳を担当した松田です。この下巻の12,13,16章、特に13章を巡る、滑稽かつ悲惨な内部事情を知っている範囲でのべ、読者にお詫びをすると同時に、監修者と訳者の恥を濯ぎたいと思います。
本書の翻訳は数年前に監修者の二間瀬さんから依頼されました。私は自分の分担を2010年7月に終えました。翻訳権が9月に終了するので急ぐようにとのことでした。ところがいっこうに本書は出版されず、今年6月になり、いきなりランダムハウスジャパンから、本書が送られてきました。そして13章を読んだ私は驚愕しました。
私は監修者の二間瀬さんに「いったい誰がこれを訳して、誰が監修して、誰が出版を許可したのか」と聞きました。二間瀬さんは運悪くドイツ滞在中で、本書を手にしていませんでしたので、私は驚愕の誤訳、珍訳を彼に送りました。とくに「ボルンの妻ヘートヴィヒに最大限にしてください」は、あきれてものもいえませんでした。Max BornのMaxを動詞と誤解しているのです。「プランクはいすにいた。」なんですかこれは。原文を読むと、プランクは議長を務めたということだと思います。これらは明らかに、人間の訳したものではなく、機械翻訳です。
先のメールを送ってから、監修後書きを読んで事情が少し分かりました。要するに12,13,16章は訳者が訳をしていないのです。私は編集長にも抗議のメールを送りました。編集長の回答によれば12,13,16章は、M氏に依頼したが、時間の関係で断られたので、別途科学系某翻訳グループに依頼したとのことです。ところが訳のあまりのひどさに、編集部は監修者に相談せずに自分で修正をしたようです。12,16章の訳はひどいなりにも、一応日本語になっているのはそういうことだと思います。ところが13章は予定日までに完成しなかったらしく、出版期限の再延期を社長に申し入れたが、断られた編集長は、13章の訳稿を監修者に送ることもせずに、独断で出版したらしいです。重版で何とかしようとしたようです。出版を上巻だけにして、下巻はもっと完全なものになってからにすればよかったのに、商業的見地からは、上下同時出版でないとダメだそうです。
二間瀬さんは社長に、強硬な抗議文を送り、下巻初版の回収を申し入れました。社長も13章を読んでみて驚愕したようです。そして回収を決断しました。
自動車のリコールがときどき問題になります。そして社会的指弾を浴びます。しかしあれは発売時点では欠陥に気がついていなかったはずです。ところが本書の下巻は、発売時点で、とても商品として売れるものでないことは明らかでした。本書下巻を2000円も出して買った読者は、怒るに違いないと、二間瀬さんに指摘しました。またアマゾンで書評が出たら星一つは確実だとも述べました。
本書の原書は名著です。私は自分の担当の部分を訳して、とても勉強になりました。ですから本書は日本の図書館に常備されるべき本だと思います。ところがこの13章の存在のため、もし初版が図書館に買い入れられたら、監修者と訳者の恥を末代にまで残すことになります。より完全な下巻の完成を期待しています。
納期がないとかいうの危ないですね。「クソ」になる大きな要因です。
アニメで言えば作画崩壊です。GONZOがダメになっちゃたのは作画崩壊も大きな原因だと思いますね。絵ぐらいと言う人もいますが、普通のドラマで言えば演技にあたるものでしょう。絵ぐらいというなら、シナリオを読めばいいじゃないですか。
機械翻訳の文章に話を戻しますが、これは作画崩壊を超えた、シナリオ崩壊です。
たまに他社が翻訳したものを修正してくれという仕事もありますが、基本的にお断りします。やり直した方がましだからです(そもそも依頼してくる会社がお金がかかってもいいから修正しようと考えたのですから、踏んではいけない地雷だとわかります)。上のような、まるで映画に出てくる頭のおかしな人がつぶやくような文章を、どう直せと?
無理かもだ!
機械翻訳がこんな意味不明になるのは、「心」がないからですね。そもそもコンピューターには「文章を理解する」という機能は存在しないですから。どんな変な文が出力されても、プログラム通りにやってるわけです。
料理人に大切なのは「舌」だそうです。何がまずくて、何がおいしいか判断する能力を持っているかどうかが重要だそうです。
適当に作ったまずいカレーにスパイスを入れたら味がまともになりますか?
それに最後に修正したのはあの人ですから、こちらの責任にされても困りますし。
かくいう自分もこれまでに各方面にご迷惑をかけてきたので大きなことは言えませんが、納期優先の丸投げは身を滅ぼすと言えます。
何かを作る仕事は、それに許された時間とクオリティーとの闘いです。
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コメント
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技術的に興味があるので、機械翻訳に関わっている人(研究系の人、メーカーの人)の話を聞くことはよくありますし、機械翻訳がからむ仕事もときどき請けています。
実際、使う場面と使い方さえ間違えなければ、最近の機械翻訳の精度はかなり上がってきています。ただし、その「場面」が問題で、現状で辛うじて使えるのは、コンピューターマニュアルみたいに定型的な文が多い文章に限られます。あと、特許も定型が多いので、補助的に導入している人はけっこういるようです。
でも、一般の翻訳となったらまったく別で、シナリオ崩壊どころか、八百屋さんにシナリオを依頼しちゃったというくらい阿呆な話。
でも、いちばん問題なのは、機械翻訳の是非とかではなく、そんな状況でも予定どおりに出版しなきゃならないという、その理不尽さです。そんな無理して、結局は回収→再版とか、ムダな出費になっている。「武田ランダムハウス」という名前からして、そもそも大丈夫か、という感じの会社でしたけど。
投稿: baldhatter | 2011/08/03 14:55
baldhatterさん、どうも
機械翻訳は活用すべきでしょうが、弱点も知らないといけないので、結局翻訳ができる人が使わないとダメだと思います。
ランダムハウスと講談社の提携が打ち切られて、この会社の社長が両者の株式を取得してこの会社を設立したそうです。
武田ランダムハウスからランダムハウス共産党に社名を変えた方がいいかもしれません。
投稿: 竹花です。 | 2011/08/03 17:56