坂の上の雲 12回 敵艦見ゆ その1 (画像と感想を交えつつ)
旅順攻略後から、永沼挺身隊の出撃、黒溝台会戦の前まで。参謀部がダメだと前線が危機に曝されて、見ている側の緊張度が増します。
銀河英雄伝説のそれってマズイよ~って展開です。
好古の度量の深さが阿部寛の大きさとマッチしてます。
そして予期せぬコサック軍団の大攻勢。
それもまた痛快よ!
バルチック艦隊はその遠洋航海を続けつつある。これだけの大艦隊がヨーロッパの北海から極東の海まで、それこそ万里の波濤を蹴って遠征するという事業そのものが、すでに英雄詩的であった。
バルチック艦隊の濃いめの船体色が黄色い煙突を際立たせています。
そのバルチック艦隊は、アフリカ喜望峰をまわり、一路、極東を目指していた。
広島・呉の軍港に三笠が戻ってくる。
旅順要塞はすでにおさえた。三笠以下、東郷の艦隊はその根拠地であった裏長山列島を離れ、第一艦隊は呉へ、第二艦隊は佐世保に入った。
どの船も傷みようが酷かった。長期間浮きぱなしであったことと、大小の海戦のために、砲などもずいぶん傷んでいる。三笠なども、取り替えねばならない砲がいくつかあった。
東郷平八郎が陣取る司令官室に据えてある副砲は元々、水兵の反乱鎮圧用だとか。
明治天皇が海軍を激励する。
万難を排し、今日の成功を収めた事を、嬉しく思う。
なお、前途は遼遠なり。
将来に対し、ますます奮励努力するように。
そして東郷に尋ねる。
ロシアの増援艦隊が来ると言うが、(勝つ)見込みはあるのか?
東郷が答える。
バルチック艦隊が来ましたならば、誓ってこれを撃滅し、宸襟(陛下の心)を安んじ奉ります。
帝は大きく頷いた。
お帰りなさいまし
(石原さとみ、いいよね)
お祝いの席といえばこれ。
真之が中佐に昇進したと聞き、母親が喜ぶ。
その流れを無視して多美がバルチック艦隊はいつ来るのかと真之に聞く。
季子が止める。
聞いちゃいけない?と多美だってご近所に毎日聞かれるのよ。季子だってそうでしょ?
でもと季子はためらうが、多美はそのあたり気にせず、
真之さん、バルチック艦隊は今、どのあたりにいるんでしょう?
それがわかれば苦労はありませんと真之。
そりゃそうだと多美が笑う。
勝つはよね?と多美が聞く。
……
……
勝ちます。
平和ですな。
大河とは、家庭の描き方が違って庶民ぽい感じがいいです。
明治38年1月 満州・沙河(しゃか)
戦線が沙河の線で凍結している。沙河とは、奉天の南、およそ10kmを蛇行する河である。
日露両軍とも、長大な塹壕を掘り、柱を立て、その上に屋根をかぶせて掩堆にし、風雪と砲弾に堪えるようにしていた。
旅順陥落後、野戦兵力のすべてを挙げて決戦を強いるという奉天会戦の作戦案が作られつつあったが、それには旅順から乃木軍が北上してくるのを待たねばならなかった。
ロシア軍としては沙河を挟んで手一杯に展開している日本軍のもっとも手薄な最左翼(西側)に強烈な重圧をかけ、同時に正面攻撃を行えば、包囲殲滅できるであろう。
ヴォトカ(ウォッカ)だ。
どっちも兵士は寒そうですが、塹壕の構造はロシアの方がいい。
秋山好古の騎兵旅団はその日本軍最左翼を守りつつ、敵情偵察を行っていた。
李大人屯・秋山支隊司令部
騎兵第八連隊隊長・永沼中佐が好古に呼ばれた。
総司令部より許可が下りたゆえ、いよいよ行ってもらう。
お前の作戦目標はヤオメンの大鉄橋、ロシア軍の後方600kmの補給動脈を爆破する挺身騎兵戦法じゃ。
実に痛快でありますと永沼。
司令官も豪快なら、部下もまた豪快。
旅順が落ちた今、ロシア軍は乃木軍が合流するまでに、攻勢を仕掛けてくるじゃろう。奴らは冬を得意としておるからな。騎兵の真価を発揮して、後方攪乱、牽制、兵站の襲撃、やれることを全部やってこい、ええか永沼!
そして炎にくべた酒ように一瞬ながら激しく燃えるということですか。
好古は自分の人生は簡単明瞭でありたいと思っている。
「俺の一生の主眼はひとつだ」と、かねがね言っていたが、ひとつというのは、騎兵の育成ということであった。
非常な難儀に遭うじゃろうが、これが本当の騎兵行動じゃと好古が鼓舞する。
頼むぞ、ええか!頼むぞ!
かっこいい。
先行していた斥候が永沼に報告する。渾河と遼河の中間地点を敵大騎兵隊が移動中。
出おったか!と永沼。
敵兵力は一万騎と斥候が言う。まるで森が動いているようであります!
中央のすべてが騎馬。まるで300(スリーハンドレッド)
永沼中佐が言う。途轍もない攻勢が始まるぞ。急ぎ、旅団司令部に報告せい!
を読んでもらうと、この挺身隊が何をして、戦局にどれだけの影響を与えたのかわかります。
永沼挺進隊は1月9日に蘇麻堡を出発。哈爾套を経て、2月11日に新開河の橋梁爆破を行った。2月14日、張家窪子で追撃してきたロシア軍の砲撃を受けた永沼は、敵への攻撃を決断する。永沼挺進隊が乗馬のままロシア軍が陣取る高地への突撃を開始すると、敵は土塀に囲まれた部落への退却を開始。そこで永沼はそのまま追撃戦を行い、部落での激戦の末、敵を敗走させた。しかし、この戦闘で浅野中隊長以下十数名を失い、また多数の負傷者も出て戦力は半減してしまった。そこで17日に長林子で部隊の再編成を行い、その後は小部隊ごとに通信施設や糧秣施設の破壊活動を行った。3月24日、永沼挺進隊は大石橋で騎兵第八連隊と合流し、75日間に及ぶ挺進行動を終えた。
挺進隊が敵軍に与えた損害は微々たるものであり、爆破した橋梁も1日以内には復旧していた。しかし、敵に与えた脅威は大きく、それが奉天会戦の戦況にも大きな影響を及ぼしたのであった。
http://www.sakanouenokumo.com/naganuma.htm(知ってる人はそこ省略しちゃうのとか思うんでしょう)
煙台・満州軍総司令部。
秋山支隊の伝令が総司令部に到着した。
伝令の報告を松川敏胤(よしたね)作戦参謀が受け取り、児玉源太郎総参謀長に見せたる。
この寒さに、ロシア軍が大攻勢に出るなど、そんな馬鹿な事とありませんと松川。
「敵は何か、よほど大規模な作戦を企図している模様」と児玉が報告を読み、騎兵というのは、どうも反応が機敏に過ぎるんかのう。
秋山さんは、そうは見えませんがと松川が軽口を叩く。
まったくじゃと児玉が笑う。
ロシア軍はなるほど大兵力で動きますと松川。
そして前へ進むと、壕を掘り、杭を打ち、鉄条網を巡らすという、陣地前進主義をとる(先にさりげなくロシア軍の陣地を見せておいているのがいいですな)
しかしこの凍った地面を相手に壕を掘るなどと。
いくら腕力が強いというても、ツルハシが跳ね返るだけですと井口省吾参謀。
冬将軍でロシアがナポレオンの大軍を打ち破ったのは、もう百年も昔じゃ。今とは戦争のやり方が違う。
決戦は春じゃなと児玉。
お前はその目で見たんか!と旅順攻略にあぐねいていた第三軍の参謀陣に言った児玉源太郎とは思えないお言葉。
この甘さが一度(旅順攻略)ならず二度までも危機を招く。
(参謀は判断を誤るというのをこの坂の上の雲は訴えたい模様)
※ロシア第二軍を率いているのは消極主義のクロパトキンではなく、グリッペンベルクになったとは日本側は知らないので余裕をぶちかましていた面もあるでしょう。しかし総司令官はクロパトキンのままなので、ドラマを見ている人にはグリッペンベルクという名前を出したら、余計な説明になるかも。
児玉総参謀長率いる満州軍総司令部は、好古の敵情報告を「騎兵の報告」だと軽視し、黙殺。清岡、栗原、中屋の三人が憤る。
好古は地図を見ている。
来るとすれば、我ら正面じゃなと好古(怒っても仕方がないと言わんばかりに)。我らがおるこの左翼は、40kmの正面を8,000の兵で守っておる。ロシア軍はこの薄っぺらな戦線を、ぶち破りに来る。
無理だと清岡。8,000ではとても踏みこたえられん。
もう一度、援軍を要請してみましょうと栗原が言う。
要請はもう何度もした。総司令部は耳を貸さんと中屋。
そこをもう一度と栗原。
攻勢が始まらなければ、援軍は出んよと、好古が酒をつぎながら言う。
もう好古は腹をくくっている。
そんなと落胆する部下たちを好古は励ます。
自分たちで守るしかあるまい。3万までならなんとかなろう。
凄いな好古。
(守りに徹すれば、2倍の兵力が攻めてきても支えられると兵法では言うものの、3万とは好古支隊の約4倍)
しびれるね!
一月二十五日夜、総司令部の予想に反してロシア軍の大攻勢に打って出た。
黒溝台会戦の始まりである。
次回に続きます。
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