坂の上の雲 12回 敵艦見ゆ その2 (画像と感想を交えつつ)
黒溝台会戦から連合艦隊の出航まで。
コサック騎馬軍団の猛攻を、多大な犠牲を払って防いだ秋山支隊。
露軍による突然の大攻勢に慌てる満州軍総司令部に現われる第三軍乃木将軍。
参謀の判断が前線の将兵の生死を握ります。
一月二十五日、午前三時
黒林台・秋山支隊前線基地
何かを感じて大地に耳をつける。
コサック騎兵は突撃する馬上から小銃を撃ってくる。
まるでロンメル戦車隊が走行しながら主砲を撃ったようだ!
大攻勢の圧力に日本軍の前線は破られた。
このままでは全滅すると、前哨の二個小隊が後退を決定する。
黒林台が敵の夜襲を受け、前哨の二個小隊が撤退したとの報告が好古のもとに届く。
同行する清岡がその数に唖然とする。三万どころでは……
木じゃない。
コッサク騎兵だ!
敵ながらこれはカッコイイ。
砲兵も連れている。
秋山支隊と同じではないか。
秋山騎兵隊の兵士たちが馬を掩堆に入れる。
騎兵を育てた以上は、世界一のコサック騎兵団とサシで戦ってみたいという子供じみた妄想は、好古の中にも多少は息づいていたが、しかしその衝動を抑えぬくことが、彼の戦闘指揮原理であり、このため彼の騎兵部隊は、戦闘となれば馬を捨てて徒歩兵となり、射撃戦の形をとることによって、コサックと戦った。
コサックは日本軍の拠点に味方の砲撃の中、突っ込んできたのか。なんと勇壮な。
敵の砲撃をものともせずコサック騎兵は突き進む。
日本兵が迎え撃つ。
騎兵がその打撃力を生かして前線に風穴を開けて、歩兵がその間隙から敵陣へと殺到する。
敵の攻撃は熾烈を極めており、味方兵力は急速に消耗しております!
第四師団正面が敵の砲撃を受けたとの報告が満州軍総司令部に入る。
直ちに撃退せよと松川が命じる。
秋山支隊の李大人屯正面は、前哨の黒林台が後退しましたと松川が児玉に言う。
さらに沈旦堡守備豊辺支隊は、砲四十門の砲撃を受け、死傷者続出です。
児玉が秋山支隊への援軍編成を急げと命じる。
しかし予備の第八師団はすでに出払っていると松川。
中央から引っこ抜いてでも、左翼(秋山支隊の戦線)へ回せ!と児玉が怒鳴る。
左翼が潰されれば、そこから全日本軍は崩壊する!ロシアは包囲戦を仕掛けてくるぞ!
第一軍の藤井、第二軍の落合に電話をつなげ、出せる師団をすべて報告させよ!と児玉が命じているとき、総司令部の扉が開いた。
乃木のジジイか。
乃木、よう来てくれた。これから面白いぞと児玉が乃木の肩を叩く。
岩山相手ではないからのうと児玉が笑う。乃木も笑う。
大騒ぎしてもどうにもならん、軍司令部は勝つように軍令を出していく。
児玉は元来、日露戦争を純粋な意味での軍事的勝利で解決できるとは思っていなかった。冷静な計算の上では、どのように日本軍が勇戦敢闘しても、五分五分に持ってゆければ上等であり、それをなんとか作戦の面で敵を凌駕して、六分四分に漕ぎ着けるというのが大山・児玉の目標であった。
日露戦争の陸戦は、六分四分というわずかな勝ち星を得つづけて今日まで来た。
「秋山閣下、危険です」という部下の言葉を退け、好古は前線に立つ。
しかし二年目に入ったこの戦争がもし三四年も続くようなら、日本の財政は死滅の危機に瀕することになるかもしれない。
「戦争による財政的滅亡」という危機感が最初からあったために日本政府がこと時ほど、国家運営の上で、財政的感覚を鋭くしたことは、それ以前にも、それ以降にもない。
この同じ民族の同じ国がはるかな後年、財政的にも無謀極まりない太平洋戦争をやったということは、ほとんど信じがたいほどであった。
※その「財政的にも無謀極まりない太平洋戦争」とシナ事変がどうして出来たかについては「圓の戦争」を見てもらうとわかります。
おい、何をぼ~っとしておる。穴蔵から馬を出してやらんかい!と好古。ここ数日、お天道様を拝んでおらんぞ。我らは騎兵ぞ!
黒溝台会戦はロシアが発動し、その主動(今なら主導)によって行われた。その途中、ロシア軍は成功寸前の体制を示しつつ、退却してしまった。この会戦は、日本軍にとって決して勝利とは言えない。いわば防戦の成功であった。
好古が前線に斃れたロシア兵を見て、「清川、埋葬してやれ」と命じる。敵にも慈悲を見せる武人の鑑です。
前線に現われた松川作戦参謀が、好古のもとへやってきて「難戦でしたな」とねぎらう。
だがそう言った松川を好古がたしなめる。
難戦というて片付けては死んだ者に無礼だ。
もともと敵が大集団でやってくるという様子については、アシの手元から何度も報告し、警報してきたところだ。それを軽視しきっていたためにこの不始末だ!
参謀の判断が前線の将兵の生死を分ける。参謀は重責を負っているわけです。
バルチック艦隊はマダガスカルのノシベという漁港に居座り続けていた。
ドイツの石炭会社との紛争。本国からの訓令の曖昧さ。第三艦隊との合流の問題。などが重なって、どうにも錨を揚げるわけにはいかないのである。
いつどこからバルチック艦隊が現われるか、(松川みたいに)見誤れば満州に展開する日本帝国陸軍を全滅させ、日本をも滅ぼしかねない。
真之は自宅の畳に寝そべり、天井を見つめている。
季子が真之に豆を渡す。
何もありゃせんと真之。しかしアシには天井が地図に見える。
変わった人ねと季子が笑う。
バルチック艦隊が、どこを、どう来るのか?と真之は考えていた。
この前、新聞記者さんに言っていたあれねと季子。
ここが思案のインド洋じゃ。
さてそろそろ時間かと真之が立ち上がる。
軍艦行進曲が三笠艦上で演奏されたのは日本海海戦を通じてこの時だけである。
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