坂の上の雲 旅順総攻撃 その1(適当に寸評を入れつつ)
渡辺謙の語りと減色した写真で構成されたオープニングに鳥肌が立ちます。
まことに小さな国が開化期を迎えようとしている。
明治初年の日本ほど小さな国はなかったであろう。
産業と言えば農業しかなく、人材と言えば300年の間、読書階級であった旧士族しかなかった。
明治維新によって日本人は初めて近代的な
「国家」
というものを持った。
たれもが
「国民」
になった。
不慣れながら、その「国民」になった日本人たちは、日本史上の最初の体験者として、その新鮮さに高揚した。
この痛々しいばかりの高揚感がわからなければ、この段階の歴史はわからない。
社会のどういう階層の、どういう家の子でも、ある一定の資格を取るための記憶力と根気さえあれば、博士にも官吏にも、軍人にも教師にもなりえた。
この時代の明るさは、こういう楽天主義から来ている。
今から思えば、実に滑稽なことに、米と絹しか主要産業のないこの国家の連中が、ヨーロッパ先進国と同じ海軍を持とうとした。
陸軍も同様である。
財政の成り立つはずがない。
が、ともかくも近代国家として作り上げようというのが、もともと維新成立の大目的であったし、維新後の新国民の、少年ような希望であった。
この物語は、その小さな国が、
ヨーロッパにおけるもっとも古い大国のひとつロシアと対決し、
どのようにふるまったかという物語である。
主人公は、あるいはこの時代の小さな日本ということになるかもしれないが、ともかくも我々は、3人の人物のあとを追わねばならない。
カッコイイオープニングでした。
金策に奔走する日本銀行副総裁・高橋是清。
日露戦争が始まる直前に、日本銀行がもっていた正貨はわずか1億1700万円にすぎず、これでは戦争ができない。
(正貨とは黄金で1億1700万円という意味です。)
ちなみに日露戦争の戦費総額は18億2629万円。
戦争債を買ってもらえなければ半年で日本軍は負けるというのは正しいです。しかも国債世論はロシアが勝つと見ている。日本の国債を買うのは金をドブに捨てるようなものだと考えても不思議ではありません。現代に置き換えるなら、ギリシャの財政をもって戦うようなものでしょう。おそらくみんなが破綻すると思っている。それを跳ね返して勝った当時の日本は凄い。
そんな中、5000万を買ってもいいという金融家が現われる。
作戦参謀だった有馬良橘が大本営付きとなり、艦隊を離れることが決まったと秋山真之に参謀長・島村速雄告げる。
島村速雄の評価:
秋山真之や有馬良橘ら幕僚たちをまとめ、東郷をよく補佐する島村の働きぶりは目覚しく、東京朝日新聞や読売新聞に彼を称賛する記事が大きく取り上げられるなど海軍外にもその活躍は知れ渡ったが、彼は旅順封鎖作戦終了後に参謀長の座を降り、第二艦隊第二戦隊司令官に転任となっている……
秋山真之の能力を早くから高く買っていたようで、「作戦は彼に任せておけば問題ない」と太鼓判を捺しているが、秋山の功績とされているものの中には、島村の発案を継承したものも少なくなかったことが最近の研究で明らかになってきている。このように、島村は自分の周囲の不始末については自ら責任をとりつつ、業績については他に譲ることを常としていた。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B3%B6%E6%9D%91%E9%80%9F%E9%9B%84
旅順に潜むロシア軍艦隊に対する閉塞作戦が失敗した海軍。
いよいよ陸から追い出してもらわねばならん。
あるいは、我らが旅順港に突っ込むか……
今度、旅順の敵艦隊が出てくるとすれば、バルチック艦隊が回航して日本海に現われたとき。それではもう遅い。日本は海上補給路を断たれ、満州の陸軍が孤立無援となる。
あの旅順というものについて、陸軍の感覚は鈍すぎると苛立つ真之。
(三笠の艦内がよく出来ています)
陸軍参謀本部は開戦当初、「旅順攻略」というものは、作戦案のどの「章」にも入れていない。
満州の大陸を手のひらとすれば、小指一本突き出ているのが、遼東半島である。
(実線は陸軍の進撃路)
陸軍はその先端には触らず、旅順北方の南山付近を占領し、その南山付近に強力な防御線を構築して、旅順を封じ込めてしまってから主力は満州平野を北上していく。
つまり小指の関節あたりを糸でしばることによって血行を止め、旅順を腐らせる。
そういう作戦で、あくまでも陸軍作戦の指向は、満州平野であり、地名で言えば遼陽を制し、奉天を制することであった。
大陸を北進する日本軍歩兵部隊。
(画面がいちいちカッコよろしい)
海上補給路を無視すれば陸軍の考えたように旅順は包囲して兵糧攻めにするのが正攻法。しかし補給を考えたら旅順艦隊の誘出撃滅は必定。
そして日本側の誰も、おそらくロシア側も予想しない激闘が始まります。
続きます。
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