なぜ文明は崩壊するのか?それは「反対」するから
本のタイトルが幾分「釣り」なのですが、面白いので紹介を。
人はなぜこうも反対するのか?炎上するのか?というのが納得できました。
ハードカバーですが、新書みたいな読みやすい本です。
前半をまとめると:
文明(というか経済を含めた社会体制)崩壊のパターンでは、(人間の生物的)進化と(社会制度の)複雑化のスピードの差が災いして認知(正確な状況認識)が置いてけぼりにされ、思い込み(本書では「ミーム」と表現)が知識を追いやるだけでない。ほかならぶ私たちの本能が進歩を妨げる障壁になっているのだ。(34ページ)
複雑な状況がスーパーミームを生み、スーパーミームが単一化を押し進め、単一化が絶滅を招く。
「とにかく反対」というのもそのひとつ:
反対意見は賛成意見よりも言いやすい。この事実はミームからスーパーミームに成長したことを意味する。合理的な解決策が出てきても、拒否、批判、抑圧、無視、詐称、軽視、反論するのが当然のこととなってしまうのだ。人類の歴史を振り返っても、反対は進歩を遅らせる険しい、そして高い壁になっていた。(91ページ)
反対の声ばかり大きい社会は、実は操作しやすい。反対する心理を知り尽した個人がいれば、難なく世論を動かし、都合のいい方向へ持って行ける。「何でも反対」の文化は、思考や行動が画一化しがちなのだ(96ページ)。
なぜそうなるのか?進化と考え合わせれば一目瞭然。
よく知っていることは危険が少ないのだ。すでに知っていて理解しやすいことを選択するほうが生存の可能性が高くなる。反対に未知のものに近づくときには危険がともなう。(101ページ)
反対や回避といった行動は恐怖心によって加速される
脳が異常事態を知らせる強力なメッセージを発信すると、高次元な思考能力は低下する。さらに変化それ自体がストレスと不快感を増幅させる(103ページ)
予想と現実のズレを敏感に察知することは、人類の遠い先祖が生き残るために必要な能力だったのだ。つまり私たちは、複雑なものに対して抵抗を感じるべく進化してきており、それは本能的な反応ということだ。複雑さを減らしたり、遠ざけたりするのに反対は有効な行動である。だから反対する思考や行動は、複雑な状況にかならずくっついてくるものなのだ。複雑さが増せば増すほど、反対も強くなる。(104ページ)
だから対案を聞いても出てこない。
解決策のひとつは「ミーム」を意識化し、「スーパーミーム」にしないこと。
あとは「ひらめき」、常識をつくがえし、世の中に広く当てはまるまったく新しい考えを生み出し、それを受け入れることだそうな。
後半はそういう話。アイデアを考えるには1人よりも2人がいいが、最高でも5人ぐらいまで。それ以上多くなると否定的な意見が多数を占めるようになる。
だから国会で建設的な議論ができるわけがないのですね。
目標を共有していない集団が何時間も議論しても何か生まれるわけがない。
さらにいろいろ読む必要があると感じますが、入門書としてはいいと思います。
文明崩壊も引用されてました。これはかなり面白いですよ。干ばつ恐るべし
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コメント
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>文明(というか経済を含めた社会体制)崩壊のパターンでは…
竹花さんも言い換えておられますが、「社会体制の崩壊」ならいいんですが「文明崩壊」と言われると違和感を感じるんですよね(後者は全人類が産業革命以前の暮らしに戻るイメージ)
ローマ帝国が滅亡してもローマの人たちが全員死んだわけではないので、人類全体として文明を維持していければまあいいんじゃないかと(こう思うのは僕があまり「国家」という枠組みで思考しない人間だからかもしれませんが)
逆にあらゆる社会体制が未来永劫存続する世界があったらそっちのほうが異常なんじゃないかと。
とはいえ、もし日本が崩壊したら自分も大変な思いをするであろうことは間違いないので、それは回避したいなとは当然思います。
投稿: おじゃま丸 | 2012/07/29 15:24
おじゃま丸さん、どうも
>逆にあらゆる社会体制が未来永劫存続する世界があったらそっちのほうが異常なんじゃないかと。
たしかにそうですね。
万物流転の世の中で同じ状態を動的に維持しようとするのが生命の働きだと聞いたことがあります。昔になんか戻れないと思います。
投稿: 竹花です | 2012/07/29 20:11