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2015/06/09

寺島実郎が言っていることがモヤモヤするので、キッシンジャーのWorld Orderを斜め読みした

親がサンデーモーニングを見ていたら、寺島実郎という人がドヤ顔でキッシンジャーがWorld Orderという本で示唆するようにヴェストファーレン体制(主権国家同士の勢力均衡による平和)の崩壊する21世紀において、自衛隊の海外派遣は時代に逆行するだみたいなことを言ってました。

キッシンジャーがそんなことを言うか?と思って所々(日本の関連するところと結論)読んでみたら、やっぱり違った。

そもそもキッシンジャーの本はあくまでアメリカ人向けに書かれているので、アメリカはこう動くべきだみたいな提言ということを念頭に置いて読まなければなりません。(個人的には前の「外交」の方が過去の外交の分析的で面白いですが。)

キッシンジャーが常に言っているのは、「アメリカは世界情勢を安定させる努力から手を引くな」です。アメリカがアジアから手を引いたら、中国や日本が今までアメリカが占めていた地位を奪いにかかると警告しています。自衛隊とか憲法第9条については書いてませんでした。

ただ日本の軍事強化については書いています。

日本がアメリカとの同盟を重視するのか、中国の台頭に適応するのか、独自の外交政策に舵を切るのか、アメリカの長期的なアジア外交政策によって決まるというような書き方をしてました。口先だけのアメリカの保障ではなく、実際の世界の勢力バランスと世界の潮流によって日本は先にあげた3つの政策のどれを重視するか考えるだろうと書いています。
この本はアメリカ人向けに書いていますので、アメリカがアジアから手を引けば、日本は日米同盟を重視しなくなり、軍事化が進むというニュアンスが含まれているように思います。

沖縄の米軍基地反対派の多くは日本の自衛隊の装備や活動面での強化にも反対してしますが、米軍基地がなくなったら、逆説的ではありますが、日本の軍事強化はキッシンジャーの考えでは加速するとことになります。

ではアメリカはどう中国と向き合うかという話になります。ここで日本が出てきます。さすが惚れるほど狡猾なキッシンジャーですよ。

"it comes about that the United States is an ally of Japan and a proclaimed partner of China— a situation comparable to Bismarck’s when he made an alliance with Austria balanced by a treaty with Russia. Paradoxically, it was precisely that ambiguity which preserved the flexibility of the European equilibrium. And its abandonment— in the name of transparency— started a sequence of increasing confrontations, culminating in World War I"

アメリカは日本の同盟国であると同時に中国のパートナーだと明言する。これはドイツのビスマルクの外交に似ている。ビスマルクはオーストリア帝国と同盟を結ぶ一方、ロシア帝国と条約を結んでバランスを取った。(注:オーストリアはドイツと同じ側、つまり日本。ロシアはドイツと価値観を共有しない中国)逆説的ではあるが、ヨーロッパの勢力均衡体制が柔軟な対応によって平和を維持してきたのは、この曖昧さに他ならない。したがって(中国に対して)「透明性」の名の下に、そういう曖昧さを持たなくなれば、対立がエスカレートし、やがて第一次世界大戦のような状況を招く。そんな意味です。

アメリカがすぐに自由主義だ!民主主義だ!と騒ぐけど、中国はそういう国じゃないから、そういう価値観は刺激しないで秩序の構築に望むべきだと。

寺島実郎という人、ウクライナを冷戦時代のフィンランドみたいにすればいいというキッシンジャーの意見に賛同しています。フィンランドはソ連の影響下に入ったんですから、当然平和は維持されます。キッシンジャーにとってウクライナも平和のための「駒」なのですから。

http://www.terashima-bunko.com/bunko-project/terashima/nouriki/1115-nouriki-2014-5.html

寺島実郎というリベラルな考えな人がキッシンジャーみたいな正義よりも現実のリアリストの話を引用するのは無理があるような気がします。

余談:キッシンジャーのウクライナ問題の解決策はそれでウクライナ国民が納得しないような気がします。(冷戦下ぐらいのアメリカに力があれば、ウクライナを黙らせたと思いますが)そもそもフィンランドは日本と同じ枢軸側に立ってソ連と戦って戦争に負けたという背景があります。ですからフィンランドにはソ連の勢力圏に入るのを納得しやすい素地がありました。

キッシンジャーの「外交」の方が分析としては面白いです。


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