映画 空母いぶき これは面白い!海の騎士たちの物語
トップガンを見て胸熱になった中学時代から早30年以上。レッドオクトーバーを追えで海の男たちはかっこいいなと思った大学時代。
そして空母いぶき。いいじゃないですか。海上自衛隊は決して暴力装置なのではない熱い魂を持った海の騎士じゃないですか。
パトレイバー2に対する答えでもあると思います。脚本の伊藤和典が良い仕事してます(いろんな人の手が入ってるのでどのあたりがオリジナルかわかりませんが)。戦場と政府、それぞれが判断を突きつけられる映画です。パトレイバー2で、政府は常に判断を先送りした結果、戦争の幻影を首都に招き込んでしまった。
しかし空母いぶきでは判断を送らせる猶予は現場にない。ではどうするという映画です。
戦闘シーンのスピード感が早すぎずリアルです。実戦の動画(こんなの)みてますが、ほんとこんな感じですね。ちょうど良い。アドレナリン全開映画じゃなくもっとサスペンスよりの映画です。
原作の漫画も読んでます。あれも良いですが、映画もいいです。舞台設定は改変されて敵も変わっていますが(果たしてそうかな?)、精神は逆に純化されてると思います。
ここからネタバレを含みます。
最後はそれでいいのか?と思いました。でも良く考えれば最適解です。(極めて難しいですが)それは後ほど。
敵国はフィリピンあたりの連合国家みたいです。朝鮮半島経由で空母と空母艦載機(ロシア系)、水上艦および潜水艦を大量に保有してます。半島といっても北朝鮮や韓国に空母を作る技術はない。ならば協力していた軍事大国は明確ですね。
ここからは妄想ですが、フィリピンはマスコミなどに工作を受けて中国に乗っ取られたと考えるのが自然です。最後に中国の海軍の潜水艦が国連軍と称して武力介入してくるあたりが、どの面提げて国連平和維持軍気取ってんだと。
しかし中国ならさもありなんです。中国は日本の外交に敗れたわけですよ。
実際問題、中国とのガチンコはなかなか難しいですね。アメリカの後ろ盾がなければほぼ不可能でしょう。
中国と直接対決となると最後には核ミサイルの報復という可能性がつきまとうわけで、(原作もここには踏み込んでない)、新興国家が核を持っていることはないので全面戦争も可能になります。原作を読んでいて、これはイギリスとアルゼンチンによるフォークランド紛争みたいにしない限定戦に持ち込まないと勝ち目ないよなと思っていたので、個人的にはこれはありだと思います。
日本を世界が応援してくれるというスタンスは海上自衛隊が無用な殺生はしないという騎士精神で戦ったからで、漫画ではあまり思わなかったのですが、映画版だとこのあたりが強調されていていいと思います。
憲法第九条は交戦権は放棄しているが自衛権を認めているというのが政府のスタンスです。だから自衛隊も戦える。しかし最低限度の損害に抑えろという政府からのお達し。見ていると政府お前らふざけてるのかと憤りますよ。それをひたすら守る海上自衛隊。できるだけ敵を死者を抑えようとする。自衛隊は殺人マシーンではないので相手の戦闘能力だけを削ぐ、しかし相手はこっちを全力で潰しに来る。じゃあどうする。ここにサスペンスが生まれるわけですよ。原作よりもハードルが上がってます。憲法第九条の精神を映画を面白くする舞台装置として使ってます。こういう自制のきいた戦い方は騎士道です。そう思うのは日本古来の武道の伝統かもしれませんね。
空母いぶきに対して敵潜水艦が二度目の魚雷を撃てないように魚雷を撃つかと思いきや体当たり!
原作と違いますが、なんだかかっこいい感が満載です。はつゆきが身を挺して魚雷を防ぐところはやばいです。その前かなり前、海上警備行動が下令されたあとに艦内の隔壁を閉めるシーンが出てきます。だから魚雷を受けても沈まなかったという理由になってます。なんの説明もない細かいシーンですがいいですね。
最後、いぶきが絶対絶命のピンチを迎えたら、五大国の潜水艦が国連軍として空母いぶきを守るという、とんでも展開ですが、日露戦争もアメリカの仲介がなければ日本軍が大敗北していた可能性もあるので、戦争においてこそ外交は大事で、しかも日本軍は海外マスコミを受け入れて日本は正義の戦争をしてますよと国際世論を味方につけたので、それもありかなと。空母いぶきで背後にいたと思われる中国も武力介入したので外交的に日本に敗れたわけですよ。ざまあ見ろであります!
ただ限定戦はいたずらに戦争を長引かせた例もあり、それがヴェトナム戦争です。北ヴェトナムに侵攻してはならないとされたために戦争は膠着状態に陥りました。しかし北ベトナムを爆撃を始めたら北ベトナムはアメリカとの交渉に応じました。当然、裏では中国とソ連の関係が悪化しており、中国とアメリカが国交を結ぶことで核を使わせないようにしたという外交戦略の勝利もあります。戦争は常に多面的です。戦闘に勝つだけでなく、外交的に相手を追い詰めないといけない、しかし他の隣国に脅威となるような秩序の変更は行っては今度はこちらが目を付けられる。実に難しいゲームです。そのあたりがうまかったのがプロイセン(ドイツ帝国)の鉄血宰相ビスマルクです。
最後の最後に平和が~みたいなのはアヴェンジャーズでも言ってましたね。あれはしゃあない。
この映画は原作よりも海上自衛隊のイメージアップになると思います。
あといざとなったら空母打撃群による島嶼部奪還を決断でき、敵対勢力と交戦になっても引かない首相を選ばないといけないとしみじみ思いますね。ミサイル防衛なんか要らんとか対案の防衛策もなく言ってる政党はいかんですよ。
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