仮面ライダーBLACK SUN 最高じゃないですか。
シナリオが酷いという意見も多数見ました。そうでしょう。あれは正統派仮面ライダーじゃないです。ガンダムで言えば、ジオン側がかっこいい0083。正統派仮面ライダーは人間を助けるという大ルールがある人間側から見た話ですが、BLACK SUNは仮面ライダーは完全に怪人という立場で、基本的に怪人同士の闘争の話です。この仮面ライダーはライダーが人間側だと思ってみるものじゃないです。そんなのが面白いのか。もの凄く面白い!(ジャンルは全然違いますが「ぼっち・ざ・ろっく!」くらい引き付けるものがあります)一気見してしまうヒトがいるのもわかります。仮面ライダーが誕生した50年前が学園紛争の時代だったからなのか、モチーフとして出てきます。この雰囲気が大好きな押井守原作の傑作アニメ「人狼」と似ているので、すんなり受け入れられます。個人的にはビルゲニアの最期が最高です(あくまで怪人視点で)。
映画「セブン」にこんな台詞が出てきます。"ヘミングウェイはこう書いている:世界は素晴らしい場所であり、戦う価値がある。私もそう思う。後半の部分は。” そんな作品でした。
以下ネタバレありで。
第1話から出てくるBLACK SUNはまあ悪いです。主人公なのに悪い仕事に手を染めている。それが殺す対象だった少女(葵)を助けたことで話の歯車が回り出す。この話、50年前と現在を行ったり来たりする話です。仮面ライダー誕生50周年記念だからなんですかね。でもそのおかげでBLACK SUNとシャドームーンの最後の戦いが盛り上がるのです。50年前から怪人は虐げられていて、人権を求めて怪人が運動を起こしていた。この辺りはアメリカの時代感なんですかね。そして現在、怪人の権利を擁護しようという首相が裏で怪人を金持ちに売ってたり、怪人が求める創世王から出た分泌物と人間の肉を混ぜた薬物「ヘブン」を売ったりしていた。この辺りは今の世界線とは似ていて違います。擁護しているような顔をしている人が、それをビジネスとしてやっているという現代社会の胡散臭さはリアルな気がします。怪人の一部は人間の政治家にすり寄って生きる道を選んでいる。それがゴルゴム党。人間もヤバいが、怪人もやばい奴はやばい。こういう世界観はいいですね。
最後は怪人と人間が手を取り合ってハッピーエンドな大団円じゃないのが実に良い。シャドームーンを倒したBLACK SUNが自分の殺した創世王になってしまった。怪人の人権擁護を国連で訴えていた葵がビルゲニアによって怪人にさせられるとき、やめてと泣き叫び、怪人になってへこむ。怪人擁護だけど怪人にはなりたくない。それが本音かと思いました。しかし最後、創世王になったBLACK SUNを本人の望み通りに倒し、人間から権利を勝ち取る武装闘争のために子供たちを集めて戦闘訓練を行う。おいおい、これはシャドームーンの目指した覇道じゃないか!というエンディング。最後にジョーカーもどきが社会にあふれて暴れてしまうJOKERぐらいエグい幕切れ。鳥肌立ちますね。繰り返しになりますが、これは人間側の話じゃなくて、怪人視点の仮面ライダーとして見ると面白いです。現代社会で言えば、人間側がロシアで、怪人がウクライナになるんじゃないでしょうか。
ビルゲニアの何が良いのか。信じていたことが裏切られる瞬間がある悪役キャラクターは大好きです。ビルゲニアが自分がどこで道を間違ったのかと後悔し、国連で怪人が日本がつくった生物兵器だと暴露するとき、首相から葵の暗殺命令を受けた警察の対怪人特殊部隊をバッタバッタと斬り殺していくシーンが、ガンダム0083でアナベル・ガトーが星の屑作戦が失敗してアルファジールで、連邦の艦隊に特攻するところ並みに良かったです。
配役が本当の意味で良いとドラマになりますね。西島秀俊は当然としてシャドームーンの中村倫也も凄く良かった。あと細かいところではノミ怪人。この人、シンゴジラにもちょっと出てるんですが、味があります。
最近のコメント