エイリアン:ロムルス ゴジラ-1.0と同じ原点回帰の面白さ
原点となった「エイリアン」でノストロモ号の仲間をさっくり裏切り、主人公のレプリーにぶっ殺されるアッシュと同じタイプの合成人間が出てきた!もうこれだけで胸熱です。水もしたたるエイリアンもいいです。第1作と2作のオマージュたっぷりです。
ノスタルジー全開の舞台設定が映画として新鮮に見えます。古いデザインが45年ぶりなので心にしみます。この感覚は長い海外旅行から帰ってきた後のご飯とお味噌汁です。タッチパネルじゃない光るボタン!カチャカチャと音を立てて起動する宇宙船内の電子機器。ディスプレイが昔のビデオぽい映像。こういうのでいいんだよ。もうたまらんです。
最初に出てくる鉱山都市がもうブレードランナーとかエイリアス2に出てくる植民地。タイヤが異様に大きい車両が出てくるのも、SF心をくすぐります。序盤10分でも見に行った甲斐があります。
過去をなぞっているだけという批判的な評論を見ましたがそうは思いません。それは表面的にイベントだけを追うと確かにそうなのですが、物語の根底が違います。
主人公は誰か?
ロムルスとは何か?
以下ネタバレ込みです。
主人公のレインは夜しかない鉱山惑星で酷使されている若い女性。物語の始まりは彼女の仲間が、弟として亡き父が彼女に与えたアンドロイドのアンディを使って会社が放棄した宇宙科学基地に残っている人工冬眠に必要なものを拝借して、別の惑星に逃げようとするところから始まります。
不法移民をしようとしている人間が主人公なんですよ。
タイトルになっている「ロムルス」は「レムス」とともに宇宙科学基地の名前として出てきます。興味深い名前です。
ロムルス とレムスの
双子は古代ローマの建国者とされ、狼の乳を飲んで育てられたという伝説があります。
映画もクライマックスに差し掛かり、ロムルスに入った宇宙船内で人間のDNAと融合した最初のエイリアンが誕生する。非ニュートン流体の黒い液体(Z-01)を注射した妊婦のケイからエイリアンの融合した個体が人間の子どものように産道から生まれるじゃないですか!タイトル回収。例の黒い液体をアッシュ型のアンドロイドはプロメテウスの火と呼んでました。そういうことか!「プロメテウス」はアンドロイドのデイヴィッドかと思ってました。人間から「生まれた」エイリアンは「オフスプリング」とかいうらしいですが、母親のケイを食っちゃった。そのオフスプリングが母から乳を飲もうとして食べたみたいな考察もあって、それならまさに狼と人間の種の立場が入れ替わったロムルス。これは見ながらヤバいなと。
エイリアンの物語を複雑にするのは合成人間という名のアンドロイドの行動。アンドロイドは誰のために動いているのか、会社のためか仲間のためか。己のエゴか。まったく読めないところもエイリアンの見どころ。今回出てくるアンディは見た人の記憶に残るキャラクターであり、新しい仕掛けがあります。
アンディはアンドロイドなのに性能が低いどころかもはや発達障害ぽいというのが衝撃的です。そんなアンディはレインを守るというのを第一原則としている。それなのにアッシュ型アンドロイドのモジュールをインストールされると、高性能化して会社のため、レインも含めて人間を犠牲に冷徹なロボットになるというジキルとハイド並みの変化が起こって物語をかき回します。それでも並みの映画なら、改心したりして人間に寄り添う性格に戻ったりしますが、この映画は元のモジュールをインストールしてもとのアンディに戻る。その手があったかと唸りました。アンドロイドは人間じゃない。これは生物兵器であるエイリアンにも言えることで、相手に性格が変わることを期待するなということ。すべては人間次第。なんでも都合良く変えようとする人間のエゴ。娯楽ホラー映画なのに、そういう冷たさが漂うのがエイリアンの好きなところです。
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